方言の価値 地域文化を継承しよう

 各地の方言が、じわじわと衰退している。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が、消滅する危険のある言語を発表して2018年度で10年。その中には、日本の方言も含まれる。土地土地で“お国言葉”が話されるのが豊かな文化の表れで、方言衰退は地方衰退を映す鏡といえる。方言の価値を見直し、意識的に伝え残す努力が必要だ。

 ユネスコは2009年2月、世界の約2500の言語が消滅する危険があるという調査結果を発表した。日本でもアイヌ語の他、八丈島や、奄美・沖縄など南西諸島の方言を含む八つの言語が挙げられた。

 本紙「食農のページ」(4月28日付)では、ユネスコの発表から10年たった八丈島の今を紹介。東京都八丈町教育委員会と町、学校が一体となり、小・中学校で毎年3時間、方言を学ぶ時間を設定。小学校低学年はかるたなど遊びの中で方言に触れるといった、年齢に合わせた学びの内容を伝えた。

 「オピニオンのページ」(1月28日付)では、元岐阜放送アナウンサーで浜松学院大学非常勤講師の神田卓朗さんが、沖縄県与那国町立与那国中学校の取り組み、方言劇「桃太郎」に触れた。総合的な学習の時間を活用し、郷土芸能の講師が共通語から方言への翻訳と指導を担った。17年度に半年間練習し、文化祭で大いに受けたという。

 明治以来の標準語教育とテレビの共通語放送、核家族化などで徐々に消えゆく方言。神田さんは「今は教科書で1、2ページ触れるだけなのが現状。“絶滅の危険”にさらされるもっと前の段階で、学校教育の中に方言を位置づけ、維持する取り組みが必要だ」と訴える。そんな中、授業に地域の高齢者を招き、学生が方言を聴き取りながら交流を深めるという神田さんの実践は効果的で、文化の存続という点でとても意義深いことだ。

 「国際感覚を育てる」という名の下、20年度には英語が小学校で「教科に昇格」する見込みだ。国際感覚は、足元の地域や自国の文化を知らなければ養えない。英語学習を否定はしないが、教える順番が違っている。

 20年前、鹿児島県西南端の町へ向かうバスの中、乗客の言葉が一言も理解できないという経験をした。歌のような独特の抑揚を今でも覚えている。その後の70代後半の農家への取材は、息子が“通訳”をしてくれた。

 方言は、それほど多様で多彩な文化。伝統芸能と同様の価値がある。「精神的風土」だからだ。もっと大切にされていい。神田さんの指摘のように、必要なのは「5、6歳~11、12歳の言語形成期」に、国が教育に方言教育を位置づけることだ。

 地域のおじいちゃんやおばあちゃんが先生となり、方言劇の上演や方言新聞の発行……。きっと面白い授業になるはずだ。

 各地でも食農教育とともに、方言に触れ学ぶ地域文化教育も進めてほしい。JAには地域や学校との仲介役を期待したい。

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