環境支払い見直し 多様性を後退させるな

 この春から、国の「環境保全型農業直接支払交付金」の支給要件が変わった。国際水準の農業生産工程管理(GAP)の実施が義務付けられ、現場は混乱している。対象から外れたエコファーマーの対応を含め、多様な農業が後退しないよう環境施策を進める必要がある。

 環境支払いは、地球温暖化防止や生物多様性保全の営農活動を支援する制度だ。化学肥料・農薬を5割以上減らした上で、緑肥を作付けしたり、生き物と共生したりする米作りが広がっている。2011年度に創設し、交付額は10アール最大8000円になる。

 農水省は支給要件の見直しについて、「質の高い経営レベルに誘導していくためGAPに取り組んでもらう」と説明している。主張は理解できる。しかし、エコファーマーを外す必要性があっただろうか。農家から疑問の声が募っている。

 危惧されるのはGAP推進が加速し、エコファーマーの位置付けが曖昧になることだ。ただでさえエコファーマー認定者は11年度の21万6000人をピークに減り続けている。16年度は13万人を切ってしまった。今回の措置で有意性が薄れ、さらに減る恐れがある。

 エコファーマーは1999年に制定された持続農業法に位置付けられた。土づくりと化学肥料・農薬の低減技術に取り組む導入計画を知事に提出して認定を受ける。特別栽培や有機栽培など環境保全型農業を目指す人の登竜門といえる。

 制度では5年ごとに更新し、その都度、新技術の導入が必要となる。3度、4度と更新し続けると一定の技術レベルに到達してしまい、更新しない農家も増えている。認定者が減る要因でもある。制度発足から来年で20年。実情に応じた仕組み変更時期に来ているのではないか。

 例えば、複数回更新した農家は先駆的な指導エコファーマーとして認定する。環境保全型農業のリーダーとして、地域で新技術の導入役やレベルアップを担ってもらうのはどうだろう。有機農業や減農薬を志向する新規就農者の育成にも活用できるはずだ。

 エコファーマーは環境保全型農業の裾野を広げる役割を果たしてきた。環境支払いが好例だ。17年度の交付面積は約9万ヘクタール、6年連続で増えている。交付申請額は2年続けて予算額を上回り、予算確保が課題となっているほどだ。エコファーマーの認定条件が緩やかで、少し工夫すれば容易に認定され、申請に弾みがついたといえる。

 エコファーマーといっても化学肥料・農薬の5割以上低減まで達している農家はまだ少ない。一方、有機農業のレベルまで到達したエコファーマーもいる。持続可能な農業の重要性が高まる中、その担い手であるエコファーマーを増やし、農業の持つ多面的機能を高めていくことこそ、ボトムアップ農政として支持されるのではないか。 
 

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