[未来人材] 30歳、 伝統野菜「阿蘇高菜」でマスタード 種の価値 見いだす 佐藤智香さん 熊本県阿蘇市

昨年8500個を販売したヒット商品「阿蘇タカナード」を3年かけて開発した佐藤さん(熊本県阿蘇市で)

 刺し身に合う和製マスタードがある。熊本県阿蘇市の佐藤智香さん(30)が伝統野菜「阿蘇高菜」で作る「阿蘇タカナード」だ。商品価値がなかった種に着目。肥料・農薬なしでも種の質に影響はなく、耕作放棄地を活用した栽培が見込める。農作業に汗する祖母に憧れて就農した佐藤さん。小さな種の力で、地域の課題の解決に挑戦する。

 「結婚したらどうする」「企画書を出して」。佐藤さんが大阪での仕事を辞め、農業を始めたいと伝えた時の親族の反応だ。両親は農家ではない。一族の農地を受け継ぐための書類作成は一人でこなした。印鑑をもらうため、就農に否定的だった親戚にも頭を下げた。

 本来「阿蘇高菜」の用途は漬物用。地元阿蘇で70年以上栽培が続く在来種の魅力に引かれたが、収穫期間が約3日と短く面積拡大が難しい。長年の慣習で「漬物屋の言い値で買いたたかれる」(佐藤さん)。そんな現状を変えるヒントを就農前の研修で思い付いた。

 「捨ててしまう種を活用できないか」。種なら収穫期間が長い。保管すれば年間加工でき、収入も安定する。3年かけて商品化した。

 種以外には米酢と釜炒(い)り塩しか使わない。粒の食感とまろやかな辛さが特徴だ。しょうゆと相性が良く、わさびの代わりに刺し身を一風変わった味で食べられる。30グラム、70グラム入りの2種類で、道の駅「阿蘇」や熊本空港などで昨年は8500個を売った。

 佐藤さんの畑(60アール)で取る種だけでは足りなくなり、近所の農家が育てた種の買い取りも始めた。佐藤さんは「高齢者でも栽培の負担は少ない」と強調。耕作放棄地の解消になると力説する。(木原涼子)

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