[狙う日本市場 豪州の戦略 1] 米(上) 低コスト・安定生産 コシ系短粒種 急拡大

日本市場向けの短粒種生産に特化したケイロックさん(オーストラリア・モーラメーン地区で)

 米国を除く環太平洋連携協定参加国による新協定(TPP11)で、農産物の対日輸出額が最大のオーストラリア。高付加価値の牛肉生産や米のブランド化戦略を構築し、日本市場に照準を定める。日本政府がTPP11の年内発効を急ぐ中、オーストラリアの輸出戦略を追った。

 1筆30~50ヘクタールの巨大な水田が延々と広がるオーストラリア南部のリベリナ地域。同国の主力稲作地帯だ。今月上旬、2018年産米の収穫が終盤を迎えた。同地域モーラメーン地区で220ヘクタールを手掛けるピーター・ケイロックさん(59)は、稲を眺め、「これが日本に輸出される米だ。高収量とともに高品質を実現した」と誇らしげだ。

 ケイロックさんは日本向けの短粒種米に特化して生産する。シーズンを通し、家族と従業員を含めた5人で、日本の平均作付面積の100倍以上に及ぶ水田を管理する。

 作業は機械化や先端技術を駆使して、省力化を追求。400馬力のトラクターに10条以上の播種(はしゅ)機を取り付けて乾田直播(ちょくは)をして、追肥にはセスナ機を使う。圃場(ほじょう)の水位はスマートフォンで管理し、収穫は衛星利用測位システム(GPS)を搭載したコンバインをフル稼働させる。

 こうした作業体系を確立し、低コスト生産を実現した。労働費や物材費などを含めた生産費は10アール当たり200~250豪ドル(1万7000~2万円)と、日本の平均の6分の1に抑える。

 日本向け米生産は、オーストラリアの米農家が抱える課題の解決にもつながる。干ばつ頻発地帯の同国では近年、水利費が上昇。生産費の大半を占めるなど経営を圧迫している。

 そこで、水の利用効率を高めようと、ケイロックさんが18年産から導入したのが、同国独自品種で日本向けの短粒種「うららか」だ。前年産まで作付けの半分を占めていた中粒種から切り替えた。ケイロックさんは「水の課題さえクリアすれば、生産量を飛躍的に増やせる」と理由を説明する。

 コシヒカリ系の「うららか」は、生育期間が他品種より1、2カ月短く、使う水の量を抑えられる利点がある。同国の米生産(1トン)に使う水の量は1000キロリットルと、世界平均の50%だが、「うららか」は40%(800キロリットル)と少ない。10アール収量は800~900キロ(もみ重量)で日本の約1・4倍に上る。

 同国では、17年産から「うららか」の生産が急拡大している。稲作農家イアン・メイソンさん(58)も「中粒種が中心だった稲作経営を過去10年間で短粒種に変え た」と話す。

 日本向け品種への切り替えが着々と進む。これまで干ばつの影響で不安定だった生産が安定する強みがある。

 「後はTPPが承認されるのを待つだけだ」(オーストラリアの米業者)。日本での輸入米のシェア拡大に向け、準備が進んでいる。

<メモ>

 オーストラリア農業資源経済科学局によると、2018年産の国内の米生産量は79万トン(8万ヘクタール)の見込み。干ばつで生産が落ちた2年前に比べると3倍に上る。全生産量の8割を世界約50カ国に輸出する。生産者数は約1000戸。

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