ゲストハウス 交流・出会いの場 収入も 移住者・若い農家の起業増

古民家を活用しゲストハウスを開業した大西さん(左)と、庭の掃除を手伝う農家の永井さん夫妻(香川県三豊市で)

 農山村で若い農家や移住者が古民家を改良して、地域住民や都会の若者、外国人らが集うゲストハウスを起業するケースが増えている。厚生労働省によると、旅館は減っているが、ゲストハウスを含む簡易宿所はここ数年で急増。楽しく仲間と集えたり新たな出会いの場になったりする交流拠点にもなり、“半農半ゲストハウス”という農山村発の新たな働き方が広がっている。(尾原浩子)
 

古民家活用し“複業” 香川県三豊市・大西正人さん


 若い農家らが集まる香川県三豊市の古民家をゲストハウスにした「二升五号」。米栽培やインターネットサイトを管理するウェブディレクター、観光業など複数のなりわいで生計を立てる大西正人さん(43)が2015年に開業した。東京からUターンした大西さんは「就農希望者や農業体験をする人が気軽に泊まれて、地元の農家とも交流しやすい場をつくりたかった。収入源というより、楽しく集まる場」と紹介する。

 施設利用料は4000円程度に設定。大きな部屋は、曜日限定で近隣住民にも開放し、にぎわいの場とする。

 3年間で1300人が宿泊。地元住民と交流したい就農希望者や若者、外国人ら多様な人が泊まりに来る。大西さんは、県内の七つのゲストハウスと連携し、体験交流ツアーなども計画中だ。

 同市内で野菜や米を作る永井博之さん(47)、早苗さん(44)夫妻はゲストハウス に泊まり、大西さんと友人になり移住した。現在は農業を軸に草刈りなど地域の仕事を担う他、ゲストハウスの受け付けも手伝う“複業”で生計を立てる。「東京の 会社員時代に比べ、農村は時間や金に縛られない自分で選択できる働き方が魅力。ゲストハウスは地域の仕事の一つ。集まってわいわいするのは単純に楽しい」と博之さんは笑顔で話す。
 

茨城、長野でも


 茨城県石岡市の比企智浩さん(28)は15年、米農家の父親が栽培した農作物を提供するゲストハウス「JICCA」を立ち上げた。「有名な観光地に来たいというより、農村でゆっくり過ごしたい、誰かとつながりたい首都圏の20、30代が多く来る。いろいろな人と話をできるのが何よりうれしい」と実感する。長野県売木村に10年前に移住しゲストハウスを経営する農家の遠山政良さん(44)は「ゲストハウスは、なりわいの一つ。経営スタイルは模索中だが、交流は楽しい」と話す。

 厚労省によると、旅館業法に位置付けられる「簡易宿所」は宿泊場所を共用する構造、設備を主にする宿泊施設の営業を指す。ゲストハウスについて現段階で法的な定義はなく、4、5人以上が泊まれる場合、簡易宿所に含まれるという。

 一般的にゲストハウスというと小規模の宿泊施設で、ホテルのようなフロントや 食事の提供はない場合が多い。共同の台所で 自炊できることや相部屋の利用などが特徴だ。一方の農家民宿は、農家が開業する民宿で、簡易宿所に含まれる。農水省によると農家民泊の推移などの統計はない。

 厚労省によると17年3月時点で簡易宿所は全国に2万9559で、温泉宿など和式の構造や設備を主とする旅館営業は3万9489。5年間で旅館営業は5255減少したが、簡易宿所は4488も増えた。
 

初期投資の少なさが魅力


 ふるさと回帰支援センターの嵩和雄副事務局長の話

 ここ数年、農山村でのゲストハウス開業は若者や移住者のブームになっている。初期投資が少ない、予約制で自分のペースで働ける、古民家に付加価値をつけるなど若者にとって魅力が大きい。
 

「つながりたい」思い一致


 法政大学の図司直也教授の話

 農家民宿は一般的に料理を提供し、客を迎え入れる概念が強い。一方でゲストハウスは、もてなすのではなく一緒に楽しく過ごす場所。農山村で誰かとつながりたい都会の若者のニーズと、新たな働き方やネットワークを求める農山村に移住した若者の思いが合致し、ゲストハウス開業の潮流になっている。

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