ため池廃止相次ぐ 老朽化進行 管理者減少 安全優先「苦渋の決断」 瀬戸内沿岸7府県 

ため池の点検結果と廃止の方針を農家(中)に説明する県職員(山口県光市で)

 全国のため池の6割が集中する瀬戸内沿岸地域(7府県)で、老朽化や管理者の減少を受け、ため池の廃止が相次いでいる。多い県で過去5年間に40カ所以上、他の県でも30カ所前後で、埋め立てや堤の切開工事を実施。集中豪雨などで、ため池が決壊するといった被害を防止するためだ。一方で、ため池の廃止は農業基盤の弱体化につながる。生活の安全と営農継続との間で農家が苦渋の決断を迫られている。(橋本陽平)

 5月中旬、山口県光市の蔽田ため池に、県や市の職員が点検に訪れた。同行した農家に、2019年度から堤の切開工事を始める方向で検討を進めている旨を伝えた。

 大正時代に築造されたため池は、堤の高さ11・3メートル、長さ58メートル、貯水量9100立方メートル。受益面積は2・1ヘクタールある。傾斜が40度もある堤の草刈り、取水施設や周辺の道の手入れなど、農家が丁寧に管理してきた。

 半世紀前に25件だった受益農家は4件に減り、必要水量は減少。一方、下流では宅地化が進んでいた。近年はイノシシによる被害も増加。ミミズを食べようと堤に生えた草を根ごと掘り返し、水が漏れる箇所もあった。

 農家の大木良明さん(69)は「廃止を望む住民の声が強かった。安全な間に役目を終えることは大切だ」としながらも、「われわれ農家が心を折るしかなかった」と無念さをにじませる。

 山口県周南農林水産事務所は「資産を安全な形で後世に残す意味でも、重要な決断。農業と安全をてんびんに掛け、苦渋の決断だったと思う」とおもんばかる。

 農水省によると、16年度までの10年間で、豪雨や地震によって約8800件のため池が被災した。住民の命や財産に危険が及ばないよう、廃止という選択肢も増えている。13~17年度の5年間で山口県では45件、広島県では約30件、兵庫県では26件で工事を実施。統計がない府県でも、老朽化や管理者の不足、宅地化などに伴って廃止する例が多く確認されている。

 一方、営農継続を望む農家の声は軽視できない。ため池の保全に関する条例を制定し、半世紀にわたって計画的な整備を進めている香川県は、「基本的には保存を最優先する。やむなく廃止する場合も、周辺の池と統合するなどして水源を確保する」(土地改良課)と、受益者の利便性に配慮した対応を取る必要性を強調する。

 集中豪雨や地震など自然災害は頻発している。ため池の管理・保全をどうするのか。全国的な課題となっている。 

 

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