農泊より手軽な茶会 地域伝える縁側カフェ 農業ジャーナリスト 小谷あゆみ氏

 静岡市内から車で1時間半、藁科川上流の山あいにある大川地区大間集落は、「縁側カフェ」発祥の地です。正式には「縁側お茶カフェ」と呼ばれ、農家の縁側で自前のお茶と手作りのお茶請けでもてなすサービスで、料金は300円。開催される第一、三日曜には遠方から何十組ものお客さんが訪れます。

 きっかけは2008年、地域の女性たちで1991年から運営していた直売所が、過疎や高齢化で続けられなくなったとき、それならば個々の縁側を店にしようと集落の全民家5軒で始まりました。そのうちの1軒が発案者でもある静岡大学名誉教授の小桜義明さん(73)。調査で通ううち、この地に引かれて移住した地域政策の専門家です。

 そもそも日本家屋の縁側は、外部と内部とをつなぐコミュニティーの緩衝スペースの機能を持っています。茶飲み話をし、畑の野菜やお茶を並べれば、憩いの場は地域のアンテナショップになるというわけです。

 最初に訪ねた中村敏明さん(59)の縁側では、ふかしたサツマイモ、干しシイタケやダイコンの煮物、漬物の3品が豪華に並びました。

 さらに驚いたのは、煎茶のお点前! 茶葉の上に氷を置き、冷水をほんの数十ミリリットル注ぐと、じんわり氷が溶けだす“氷出し茶”です。待つこと10分、ぐいのみに注がれた透明感のある一煎目をいただくと、緑茶とは思えないうま味に思わず声を上げました。高級な緑茶は低温で出すとアミノ酸が際立ちますが、お茶というより、うまみを抽出したエキスなのです。

 縁側カフェはハシゴが定番で、一軒一軒もてなしが違います。93歳の増子さんが畑で摘んだグリーンピース、あやめさんのきな粉おはぎ、さらに栃沢集落の山水園では、毛せんを敷いたお茶席が用意され、まるで京都の古刹へ迷い込んだような格調あるお茶会を堪能しました。

 品評会でも優秀な成績を収める大川地区は、静岡の茶祖・聖一国師生誕の地という歴史を誇ります。鎌倉時代から継承されたお茶栽培の技は別格で、茶葉の品質はもちろん、お茶のいれ方の工夫とこだわりに、洗練された文化の高さを感じました。

 どの農村にも風土に根ざした農産物と、それにまつわる文化があります。これらを生かす振興策として農泊がありますが、縁側カフェは、より気軽に人々を呼び込むことができそうです。何しろ仏間の片付けも布団もいりません。座布団を縁側に並べれば、さあ店開きです。

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