芝栽培キックオフ サッカーJ3・ガイナーレ鳥取運営会社 管理費セーブ収入アシスト 米子市

「規模を広げるほど、多くの地域貢献ができる」として、数年で10ヘクタールに増やす構想を語る高島さん(鳥取県米子市で)

 プロサッカークラブが農業に本格参入する、国内では前例のない試みが鳥取県で始動した。育てるのは芝生。日本プロサッカーリーグ3部(J3)のガイナーレ鳥取を運営するSC鳥取が、昨年から米子市で生産を始めた。今年の作付面積は3ヘクタール、数年で10ヘクタールの目標を掲げる。事業の柱に育て、遊休農地の発生を防ぎ、ホームタウンの課題解決にも一役買う。(橋本陽平)
 

ゴールは遊休農地解消


 県西部の中心地、米子駅から車で10分。畑作物の生産が盛んな同市の弓浜地区に、白ネギ畑などに混じって整然と刈りそろえられた芝生が広がる。同社が種をまいて育てた。根の繁殖力が強い西洋芝を使い、1平方メートル(縦50センチ・横2メートル)単位に切り分けて販売する。

 同社は、ホームグラウンド「チュウブYAJINスタジアム」の芝生を自ら管理する。Jリーグクラブの大半は芝の管理を外部に委託しているが、年間で1000万円は下らない費用を節約しようと挑戦。社員を芝生生産会社へ研修に送り、スタジアムで5年間管理を手掛けてきた。

 ノウハウを生かし昨年10月、芝生の生産・販売プロジェクト「Shibafull(しばふる)」を立ち上げた。「芝生」と「満ちる」を掛けた造語で「芝生で街を、人を、笑顔で満たしたい」との思いを込めた。

 高島祐亮経営企画本部長は「クラブの規模を考えると、広告スポンサー料や入場料収入だけでは経営は厳しい。芝の販売で安定した収益を生み出す」と狙いを語る。

 農地は農地中間管理機構(農地集積バンク)を介し、極力集約して借り受ける。栽培期間は3~5カ月。販売先は幼稚園や小学校、町の空き地、観光施設、家庭の庭など幅広く提案する。農薬や化学肥料を使わない栽培も試し、安全性をPR。価格は未定だが、「相場から試算すると10アールで300万円程度の収益を見込める」(同)という。
 

疲れ知らず農機を投入


 コスト削減の秘密兵器もある。プロジェクトに賛同した本田技研工業が開発したロボット芝刈り機「Miimo(ミーモ)」だ。動く範囲や刈る長さを設定でき、雨も苦にせず24時間稼働が可能だ。4月から2台を稼働させ、1台で約30アールを管理している。

 米子市と境港市にまたがる同地区には、米子市側だけで990ヘクタールの農地がある。砂地の平たん地が多く地下水が豊富で、芝の生産に適した条件がそろう。一方、担い手不足から同市の遊休農地の6割(82ヘクタール)が集中する。芝の栽培は「成長性はもちろん、地域の課題解決の面でも可能性がある」(高島本部長)と、事業化に踏み切った。
 

地元JAもサポーター


 遊休農地対策が長年の懸案だった市は、県と共に農機の導入費用を支援する。高橋浩二農林水産振興局長は「省力化や収益の利点が見えれば、周りの農家に普及できるかもしれない。弓浜の新たな営農モデルを築いてほしい」と期待。農産物の提供などでチームを応援するJA鳥取西部も「遊休農地の解消という共通の課題解決に、一緒に取り組んでいきたい」(教育広報課)と歓迎する。
 

農業とスポーツ界各地で連携プレー


 スポーツクラブと農業の関わりはさまざまな形で広がっている。J3の福島ユナイテッドFCを運営するAC福島ユナイテッドは、県産の野菜や果物、ジャムなどの6次産業化商品を仕入れ、アウェーゲーム会場でマルシェを開催。リンゴや桃の木を買い上げ、選手やスタッフが授粉や葉取り、収穫などの各栽培、販売も手掛けている。

 福岡県糸島市の男子ハンドボールチーム・フレッサ福岡は、農業を選手のセカンドキャリア(引退後の仕事)に位置付け、選手全員が農家の下で働きながら練習に励んでいる。 

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