地域と系統金融 食と農の懸け橋強化を

 農林中央金庫が地域農業振興の支援に力を入れている。JAグループを挙げた自己改革を後押しするためだ。設立から95年、地域密着の協同組合金融の特色をさらに生かしたい。JA全農との連携を強め、信用と経済を“双発エンジン”にして、食と農の「懸け橋」機能を強めるべきだ。

 農林中金を巡る大きな区切りとして、三つの“100”を思う。JA貯金100兆円達成後の次の展望と、あと5年に迫った創業100年の歴史の重み。そして、高齢化が加速する中で、資産形成支援など人生100年時代への新たな事業戦略の展開だ。

 今年度は、2016年度から始まった中期経営3カ年計画の最終年度に当たる。金融機関は今、日銀のマイナス金利政策や、ドルなど外貨調達コストの上昇などで厳しい経営を迫られている。農林中金の17年度決算も、連結経常利益は前年度対比で430億円の減益を余儀なくされた。

 一方で注目したいのは、生産基盤の弱体化が進む中で、JAバンクの農業融資新規実行額が2年連続で増えたことだ。決算会見で河野良雄理事長は「農業融資がプラスに転じたのは画期的だ。担い手対策にもさらに力を入れたい」と強調した。こうした地域農業振興を支えるのが、3カ年計画の新機軸である食農ビジネス部門の浸透だ。

 事業展開の3本柱である食農分野、JAバンクのリテール部門、国際分散投資のバランスが欠かせない。特に食農分野は最重要の位置付けだ。生産現場から加工・流通・販売までをつなぐ食農バリューチェーン構築が問われている。これには営農経済分野を担う全農との連携をさらに強める必要がある。輸出も含め政府が旗振りする農業成長産業化への貢献も重要だ。まずは、農業の付加価値を高め、持続可能な農業の足場固めにこそ力を入れるべきだ。

 農林中金法第一条には、協同組合組織のための金融円滑化で農林水産業の発展に寄与することが明記されている。金融の根幹は「信用」である。貯金額が100兆円を突破したのは、組織結集の力でありJAバンクへの「信用」の表れといえる。JAの総合事業、地域での人と人とのつながりこそが他金融機関にない持続可能性を担保する。

 歴史を振り返れば、農林中金の歩みは協同組合の信用事業の確立と重なる。前身の産業組合中央金庫は関東大震災の直後、1923年12月20日から事業を開始した。協同組合金融は地域の復興・再生の歴史と共に歩み発展してきた。間もなく設立95年。次期3カ年計画は5年後の創業100年にも照準を合わせた展望が問われる。

 課題は「ポスト100兆円」の行方である。模索は続くが、基本路線は営農経済事業をはじめ地域に根差したJAの総合力、相互扶助を原点とした協同組合金融の強さの発揮だ。

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