農地集積てこ入れ 地域の話し合いこそ鍵

 農地中間管理機構(農地集積バンク)の実績が振るわない。農水省は関連施策をさらに充実させててこ入れするというが、制度を立派にすることが正しい解決策なのか。その前に、なぜ不調なのか丁寧な検証が必要ではないか。農地流動化の基本は地域の話し合いにある。現場の活性化につながる支援にこそ知恵を絞るべきだ。

 農水省が公表した担い手への農地集積の実績は、2017年度は55%にとどまった。農地集積バンクを14年に創設し集積加速を期待したが、集積率の年間の上げ幅は1・6ポイントから2・0ポイント、1・7ポイント、1・2ポイントと低迷が続く。農地集積バンクに予算を重点配分し、基盤整備の負担軽減などを抱き合わせているにもかかわらずだ。

 同省は、地域の話し合いのベースがもともとあったところで実績を押し上げたが、一巡して鈍化したとみる。裏を返せば、各地の話し合いを活発にしていくことが集積促進の基本であり、奇策はない。農地集積バンクの仕掛けを壮大にすることに目を奪われ、現場の地道な取り組みへの目配せを欠いては、実績は好転しないだろう。

 農地集積は、安倍農政の今後の試金石でもある。12年末の政権発足後、一連の農政改革の皮切りとなったのが農地集積バンクの創設であり、法施行から5年後見直しに最初に直面するのも同制度だ。規制改革推進会議は6月の答申で、①農地集積バンクを軸とする農地集積の一層の推進②農地所有適格法人(農業生産法人)役員・構成員要件の見直し――を検討課題に挙げ、今年度中に結論を得て速やかに措置するよう提起した。

 いずれも大きな問題をはらむ。①では、農地利用集積円滑化事業を廃止し、農地集積バンクに一本化する案が浮上している。だが、旧農用地利用増進事業を引き継ぎ、市町村やJAなどが実施主体の円滑化事業が、大きな実績を挙げてきたことを軽視してはならない。JAが現場密着の強みを生かして担い手に農地集積した事例も少なくない。農水省の調査で、機構を中心に農地集積を進めるべきと答えたのは市町村、担い手とも半数に届かず、多くが複数の政策の選択肢を望んでいる。円滑化事業を廃止する理由はない。

 ②は農業生産法人の企業による経営支配に道を開き、実質的に企業による農地所有の解禁を意味する。だが、農地政策は09年、所有から利用に明確にかじを切り、同省がその“目玉政策”と位置付けたのが農地集積バンクである。所有への回帰はこの10年来の「平成の農地改革」と農地集積バンクの否定であり、理解に苦しむ。

 議論の丁寧さを欠き、性急な改革を進めた農政に対し農業関係者には強い不信がある。農地集積バンクの見直しでは検証を十分に重ね、活発な話し合いを促す対策を打ち出すべきだ。制度をいじれば現場が一斉になびくとの幻想は捨てた方がよい。

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