トランプ氏カナダ酪農政策批判 日本ノーと言えるか 特別編集委員 山田優

 「カナダは米国の乳製品に270%もの関税をかけている。知らなかったか? 米国の酪農家に不公平だ」

 トランプ米大統領は先週カナダで開いた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)直前、カナダの酪農政策をツイッターで批判した。トランプ氏は思いつきでつぶやくことが多いが、隣国の酪農政策については確信犯のようだ。

 カナダの酪農政策は、国内需要量を前提とした生乳の供給管理制度が基本で、乳製品輸入を厳しく規制する。一定の輸入量までは低税率だが、それを超えると高関税をかける。自給を基本に海外からの輸入を関税で抑える点で、日本の米輸入制度と似ている。カナダにとって酪農は農業の柱。数十年以上も強大な隣国からの批判や攻撃にさらされながら、供給管理制度の根幹は守ってきた。

 トランプ氏はそれが気に入らない。4月には、全米有数の酪農地帯ウィスコンシン州を訪れ「カナダの不公平な政策は米国に不利益をもたらす。長くは続かせない」と演説した。両国は北米自由貿易協定(NAFTA)の見直し交渉の最中で、その焦点の一つになりつつある。

 米国の酪農団体も、強力な「援軍」を得て、カナダ批判の声を上げている。団体が連名でトランプ大統領に「もっと頑張れ」と手紙を書くと、酪農主要州の知事らも、その直後に同大統領に要請の書簡を送った。米国は総掛かりで北の隣国に圧力をかけ始めた。

 米メディアによると、トランプ氏の頭の中は11月の中間選挙のことでいっぱい。同盟国との間で貿易摩擦を引き起こしても、支持層の満足度を高めることが、選挙勝利と自らの再選に近道だと考える。カナダの酪農政策は、分かりやすい標的なのだ。

 今はNAFTAが焦点で、トランプ氏はカナダを鋭く批判する。一方、日米首脳会談で両国は7月から貿易協議を始めることを決めた。9日付の本紙記事によると、米側は鉄鋼、自動車などの関税引き上げを武器に貿易不均衡の是正を日本に迫る構えだ。トランプ氏は会見で「公平、相互的の原則に基づく2国間ディール(取引)を求める」と強調した。カナダの事例を見る限り、日本に米や食肉、乳製品など農産物市場開放を迫る可能性は大きい。その時、安倍首相は踏みとどまり「それはできない」と言ってくれるのだろうか。 

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