成功する鳥獣対策 生活環境整備の視点を

 農業現場では、草や鳥獣との闘いが続いている。特に鳥獣被害は、農業の域を超え生活全般にわたる地域も少なくない。集落を挙げた総合的な「生活環境整備」の視点が欠かせない。

 岐阜県の知人から、「鳥獣災害防止七策」が届いた。送り主は郡上市和良町宮地集落(54戸)の酒井義広さん。農水省の「農作物野生鳥獣被害対策アドバイザー」を務めている。

 この地区は農家以外の住民も全て参加し、「平成の里人(いまどきのさともり)の“集楽”活動」と名付けた「むらづくり活動」を展開する。徹底した対策で昨年の鳥獣被害額は猿関連の2、3万円。イノシシ、鹿はここ数年、集落内で見かけたことがないという。

 鳥獣災害防止七策のうちの「五策」は、①皆で=住民主体の生活環境整備②囲って=鳥獣侵入防止柵の周年設置で完全ブロック③除いて=餌場、潜み場の解消、草原化防止④追い切って=人なれ防止に追い切りを集団実践⑤捕って=おり、わな、猟銃による捕獲――だ。

 そこに、⑥食べて=ジビエ(野生鳥獣の肉)の商工・観光資源化⑦里人で=集落・自治会リーダーの育成・確保――が新たに加わった。鳥獣害を地域全体の「災害」と受け止めることで、農業や生活環境など行政の複数部門の連携が進み、住民がより自分の問題として捉え、参加するようになった。これは他の地域にも参考になろう。

 取り組みは耕作放棄地対策とセットで行う。「放棄地は鳥獣の餌場や潜み場になる。草を抑えないと獣は抑えられない」(酒井さん)との考えからだ。郡上市では、高齢化による離農が進む。農業法人の規模拡大による農地の受託が限界に近づく中、防草シートで覆った田が増えている。

 鳥獣害対策は、集落を存続させるための必要条件だ。こうした問題意識を共有するため、宮地集落では航空写真を活用した対策マップが力を発揮する。どこをどう囲って、どこの草を刈り、どの獣種を防いだかを色テープで示し、ひと目で分かるようにした。“闘いの前線”を絵で見せることで、住民の前向きな姿勢を引き出す。

 加えて、畦畔や神社周り、生活道路などの景観を整備する。こうした活動を通じて絆を深め、その地に住む楽しさ、心地よさを感じられる“集楽”活動を心掛ける。大事な視点である。同集落はこの点が高く評価され、各種表彰を受けている。

 国に求めたいのは、「生活環境整備」の視点を持った鳥獣害対策である。「捕獲だけでは被害は減らない」という見方が、現場では強い。支援事業の要を「捕獲」に置くのでなく、農業と生活環境整備を組み合わせた総合的な事業を推進したい。性別・年齢を問わず一般住民が扱える手軽な対策資材の普及も望まれる。そして、これらの問題意識を持ち、実践できる集落の人材育成が鍵を握る。

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