戦争が起きたら山に逃げる

 戦争が起きたら山に逃げる。戦は地震雷火事おやじより怖い。太宰治の処女作『思い出』にそんな一節がある。大阪北部を襲った地震で小学生らが犠牲になった。安全なはずの通学路で、逃げる間もなかったかと思うと言葉もない▼きょうは桜桃忌。太宰が没して70年、その魔力と魅力は色あせない。沈鬱な作品と裏腹に、素顔は大食漢で大酒飲みだった。旅先で毎食みそ汁を6杯飲んだ。サケ一匹をたいらげた。酒豪で軽く1升を干した。つまみは身欠きにしんにみそを付ける津軽流。さけ缶に「味の素」を山ほど振りかけるのも好んだ。嵐山光三郎さんの『文人悪食』に詳しい▼畏友檀一雄は、太宰に振り回された。語り草は「熱海事件」。熱海の旅館で遊蕩していた太宰。無一文になり東京から檀に金を届けさせるが、それでまた飲んでしまう。檀を旅館に「人質」に残し、本人は東京へ金策に行くが待てど暮らせど戻って来ない▼しびれを切らした檀が東京へ探しに行くと、井伏鱒二とのんびり将棋を指している。激怒する檀を制して太宰は言う。「待つ身がつらいかね、待たせる身がつらいかね」。後に檀はこの一件が『走れメロス』を生んだと語る▼災害の時は、待つ身も待たせる身もつらい。鳴動する地震列島に住むわれら、常に備えと心構えを。 
 

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