梅雨前線異常あり

低温で数センチしか育っていない大豆を見ながら「まだ冷害と決まったわけではない。7月の天気の回復を祈る」と口々に話す農家ら(北海道長沼町で)

久しぶりに雨が降った後のリンドウの畑。「農作業が進まない」と百生さんは嘆く(28日、富山県南砺市で=百生さん提供)

 いつもと違う不安定な梅雨に、全国各地の農家やJAが困惑している。梅雨がないはずの北海道では梅雨前線が停滞し、異例の日照不足と低温、長引く降雨で、梅雨のような天候だ。一方、空梅雨・猛暑が続く地域では、人間だけでなく、家畜も“ばて気味”だ。梅雨前線が例年より北に位置するため、雨の多い地域と少ない地域の差が大きい。体調や農産物の管理への注意が必要だ。(猪塚麻紀子、尾原浩子)
 

日照不足牧草乾かず 北海道“ブルブル”


 平年に比べて大きく天候が異なるのが北海道だ。長沼町で大豆などを18ヘクタール栽培する向信勝さん(70)が、悲しそうな顔で圃場(ほじょう)を見つめる。通常なら青々として5センチ以上生育しているはずだが、今年は発芽したばかりの大豆もある。

 「5月は干ばつ傾向だったが、一転して寒く、晴れ間がなくなってしまった。大豆の生育は半月以上のばらつきがある。50年農業をしていて、こんなことは初めて」と向さんは話す。

 同町で90ヘクタールの米や大豆を栽培する柳原光恵さん(66)も「牧草が乾燥しないので収穫できない。稲は低温障害で黄色になってしまった」と嘆く。農家は7月の気温上昇と晴天を願っている。

 気象庁によると、北海道の広い範囲で、27日までの20日間の平均気温が平年に比べて2度以上も低かった。降水量は平年に比べて多く、4倍以上の雨量だった地域もある。日照時間は道全域で平年を下回り、平年の半分に満たない地域も多い。

 九州南部では、27日までの10日間の降水量が、平年の3倍以上降った所もある。既に梅雨明けした鹿児島県のJAあまみ知名事業本部は「5月は空梅雨だったのに、6月に入ると一転して雨が続いた。こんなに極端なのは珍しい」と驚く。
 

人も家畜もばて気味 北陸など“カラカラ”


 山陰や北陸では平年の半分以下しか雨が降っていない地域が目立ち、高温、空梅雨傾向が続く。富山県南砺市で花きなどを栽培する百生真さん(32)が「梅雨はどこに行ったかと思っていた。農作業がはかどらないし、体力的にきつい」と困惑する。百生さんによると、この1週間はまとまった降雨がなく真夏のような晴天が続いたが、やっと28日午前中の短時間、強い“恵みの雨”が降った。それでも、気温が高く農作業にはつらい日が続く。

 気象庁によると、東北、関東甲信、北陸、山陰などで、27日までの5日間の平均気温は平年を大きく上回り、富山市や金沢市など、平年に比べ3度以上高い地域もある。

 福島県会津美里町の酪農家、福田正幸さん(49)は、蒸し暑さで牛の乳量が1頭当たり平均2キロも減ってしまった。

 福田さんは「ここ1週間急激に暑くなり、人間だけでなく牛もうんざりしている。牛は呼吸も荒く、汗ばんでいる」と訴える。
 

降水量 地域差大きく 熱中症注意を


 気象庁によると、北海道の梅雨空の要因は、平年に比べて梅雨前線が北寄りに位置し、北海道付近で停滞しているため。本来なら梅雨真っ盛りのはずの地域で雨が少なく、北海道で雨が多い現象となっているという。

 気象庁は「降水量が極端に少ない日本海側など地域と、極端に多い北海道など、地域の差が出ている。農作物管理に気を付けてほしい」(気候情報課)としている。

 不安定な天候の時期には、熱中症の危険が高まる。信州大学医学部の能勢博特任教授は「湿度が高い日は汗が蒸発しにくく熱中症に注意が必要。特に、涼しい日が続いて急に高温になったときは、体が汗をかきやすくなってないので気を付けて」と警戒を呼び掛ける。

 農家は1人で作業を行うことが多く「人目がないところで症状が出たときに対処が難しい」(同)ため、家族や従業員同士での体調管理、チェックも必要だ。 
 

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