勝谷誠彦さん(作家) 地酒と特産料理コラボを 外国人旅行客が好反応

勝谷誠彦さん

 界中を旅し、いろいろな物を食べてきました。南極大陸に上陸したこともありますし、北極圏のかなり北まで行ったこともあります。

 スウェーデンの最北端にあるキルナという小さな町に、オーロラを撮影しに行った時のことです。零下40度の中で三脚を立ててオーロラの出現を待つ。雲が出ている悪条件で、いつ見えるかとひたすら極寒の中で待っていました。

 その町にはスウェーデン宇宙公社の施設があって、日本人の科学者も研究をしていたのです。こんなところでも日本人が働いているんだと感動しました。

 同じようにキルナで感動したのは、中華料理店があったこと。北緯68度の北極圏にも中国人が移り住み、中華料理を提供しているとは! 聞けば、世界最北の中華料理屋だそうで。

 その店で料理を食べ、紹興酒を飲みました。でも味については何の印象もない。薫製や酢漬けなどの北欧料理を食べながら、アクアビットというジャガイモの蒸留酒やウオッカを飲む方が、あの寒い町では良かったですね。ビールなんてアルコール扱いされていなくて(笑)。朝の起き掛けに飲んだり、アクアビットのチェイサーとして飲む。そんな扱いでした。

 世界中を回ってみて感じたのは、料理はその土地の風土・気候にのっとって作られたものがうまいということですね。これは酒についても同じ。フィリピンでサンミゲルビールを飲むと、とてつもなくおいしいけど、日本で同じものを飲んでもたいしたことないと感じた経験のある人も多いでしょう。

 ーロッパ、特にフランスの田舎を巡ると、農家とレストランの「距離」がとても近いことに気付きます。農家がレストランをやったり、逆にレストランが農作物を作ったりすることが少なくありません。そこまでいかなくても、各地のレストランは、地元の食材を使った料理と地酒でもてなすのが当たり前なんですね。

 それに対して日本では、両者の「距離」がとても遠く感じます。せっかくの地元の食材を使う店が少ないと感じざるを得ません。特に地方では、チェーン店が幅を利かせています。商店街を歩くと、見たことのあるチェーン居酒屋の看板ばかりというところも多いと思いませんか。もちろんチェーン店には安い価格で提供できるというメリットもあり、一概に悪いというわけにはいきませんが。

 一方で流通が発達したおかげで、東京には全国の食材や酒を提供する店が増えました。また取り寄せブームで、地方から自宅に送ってもらう人もたくさんいます。でもそれでは、その土地の風土を感じることはできません。せめて、同じ土地の料理と地酒をセットで頼めるようになればいいのですが・・・。

 んな中、僕が注目しているのは地方の蔵・酒造メーカーが始めた取り組みです。例えば大阪府交野市にある大門酒造では、築200年の酒蔵を改装し2階に「無垢根亭」という酒亭を設け、地酒と土地の料理を楽しめるようにしています。各地の蔵元の間にもこうした動きが広がりつつあります。

 僕は日本酒が好きだし、炊きたてご飯も大好き。同じ土と水で育った米から作られる白いご飯をあてに酒を飲む。これこそが究極の食と酒の関係だと信じています。実は酒蔵発信の新たな試みに、いち早く反応しているのが外国人旅行客。地方地方の特徴ある料理と酒が、食文化として多くの人に愛されることを期待しています。(聞き手・写真 菊地武顕)

<プロフィル> かつや・まさひこ

 1960年、兵庫県生まれ。出版社勤務などを経て、フリーランスの文筆家に。テレビのコメンテーターとしても活躍。報道系から飲食に関するもの、小説まで多ジャンルにわたり著書多数。日本酒に関する書としては『獺祭 この国を動かした酒』『にっぽん蔵々紀行』などがある。 


 

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