延長国会に望む 基本農政の議論始めよ

 今国会の会期が7月22日まで32日間延長されたが、安倍晋三首相が掲げる「熟議」とは程遠い状態が続く。国会は国民を代表する国権の最高機関であり、与野党は審議を尽くし、民意を反映した国会運営を果たさなければならない。貿易自由化の加速など環境激変に対応する基本農政の議論も必要だ。

 会期延長は与党が主導して決まった。だが、今国会の審議時間が足りなくなった背景には、森友・加計学園を巡る問題で、安倍首相をはじめ関係者が真摯(しんし)な姿勢で臨まず、答弁をはぐらかして時間を浪費したことがある。会期を延長して「安倍一強」の巨大与党が数の論理で法案審議を押し切る構図を繰り返すならば、国民の理解は到底得られない。

 米国を除く11カ国による環太平洋連携協定の新協定「TPP11」関連法の審議時間は衆参両院で合計約48時間だった。2年前の米国を含む元のTPP協定の時の3分の1どまりである。わが国の食と農を守る骨太な議論をできたのか疑問である。

 安倍政権が最重要法案と位置づけるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法案には、慎重な世論が多い。自民党が参院に提出した公選法改正案も、選挙区に擁立できない合区対象県の候補者を救済する目的が透けて見える。

 政府提出の農林関連9法案は全て成立した。だが、野党が共同提出した主要農作物種子法を復活させる法案は、衆院農林水産委員会で6月6日に審議しただけで止まっている。国民の主食である米や麦、大豆の種子生産の在り方を定めるものであり、関係者の関心は高い。延長国会で審議するべきだ。

 政府が6月に閣議決定した経済財政運営の基本方針「骨太方針」に食料安全保障の確立が盛り込まれた。だが、食料安保の確立や食料自給率の向上のための具体策は示していない。食料・農業・農村基本法に基づき2015年3月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画は20年に見直される。TPPなど貿易自由化が加速する中、見直し議論をいつ、どのような形で行うかを含めて、国会でも議論を始めるべきだ。

 安倍政権は経済政策「アベノミクス」で規制緩和と自由化を成長戦略のエンジンとし、「岩盤規制」突破の象徴として農業・農協改革を官邸主導で矢継ぎ早に推し進めた。この結果、規模拡大などの農業の構造改革に偏った農政となっている。

 だが、競争力強化の産業政策と中山間など条件不利地域の社会政策を農政の両輪と唱えてきたのは政府・与党ではないのか。労働力不足の問題は農業を直撃し、野菜や果実、酪農などの生産基盤の弱体化が顕在化しつつある。基本計画見直しに向けた課題は山積みだ。

 残された会期中に生産現場目線で農政を総点検し、バランスのある農政への軌道修正を図る機運を高めるべきだ。

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