酪農全国調査 家族経営の支援が急務

 3年に1度の酪農全国基礎調査がまとまった。改めて浮き彫りになったのは、都府県での生産基盤弱体化の危機的な実態だ。大規模優先の農政から転換し、生乳増産意向を示す家族経営支援を拡充した多様な酪農の共存こそが問われている。

 全国生乳割合の55%を占める北海道が増産基調に転じる一方で、都府県酪農の地盤沈下が深刻となっている。今夏、猛暑になればスーパー店頭での一定の販売制限など、飲用牛乳の供給不足が大きな問題となりかねない。中央酪農会議(中酪)がまとめた今回の全国調査は、その懸念を裏付けた。

 特に都府県酪農の底上げは喫緊の課題だ。農水省は最需要期の夏場に向け、基盤強化の対策をアピールすべきだ。今後の搾乳後継牛候補の2歳以上の雌の割合は昨年夏以降増加に転じた。この傾向をさらに後押しする必要がある。

 全国調査で驚いた結果は、都府県の経産牛40頭以下の規模の酪農家の割合が、全体の7割近くを占めた点だ。その層が生乳生産の3分の1を担う。家族農業でも増産意欲が高いことも分かった。内実は、増頭したくても資金確保が難しいなど課題が多い。酪農行政は、畜産クラスター事業にせよ、助成交付対象が一定規模以上で線が引かれる。調査結果は、そこから漏れた家族酪農の底上げの必要性を問うている。

 国産生乳の需要は高止まりする半面、国内生産は730万トンに届かず、特に大半を占める指定生乳生産者団体の2017年度受託乳量は30年ぶりの700万トンの大台割れとなっている。国産生乳は、需要はあるのに供給が追い付かない、いわゆる「チャンスロス」に陥っている。最大の課題は安定供給である。ギガ、メガ酪農と称される超大型酪農が存在感を増しているのは確か。だが、地域の維持のためにも、規模別にバランスのとれた経営が“共存”する日本型酪農を追求すべきだ。

 全国調査で生乳生産維持・増産の障害(最大三つまでの複数回答)は、今後の農政対応で注目すべき項目だ。北海道は労働力不足が約25%と最も多く、今後の乳価水準が次いだ。都府県は経営者の高齢化が2割近くで一番の課題となった。ただ都府県のうち、増産意向の酪農家を見ると乳価や飼料価格の行方を懸念する回答が目立つ。やはり経営の安定化の視点が持続的酪農の確立には欠かせない。

 一方で北海道、都府県ともに、酪農政策や自由化問題への関心が3年前に比べ半分以下に減った。先行き不安と絡め、どう読み解くのか。農政評価と結び付けるのは早計だろう。生乳需給の先行き不安が拭えない改正畜産経営安定法の施行や貿易自由化の加速など、むしろ酪農を取り巻く懸念材料は増えている。生産基盤弱体化に歯止めがかからない中で、労働力、乳価など当面の課題に忙殺される生産現場の実態と見るべきだ。
 

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