[検証 農政改革][農地集積の今 1] 合意形成(茨城) 戸別訪問と対話重ね 「機構使おう」だけでは

農地集積について市の担当者と話す古山さん(左)。農地を耕作者ごとに色分けした図を自ら作成し、地域の合意形成に活用した(茨城県桜川市で)

 山あいの緩傾斜地に水田が広がる茨城県桜川市の上城地区。「回覧板で(農地中間管理)機構を使おうと呼び掛けたところで、話は前に進まない。地権者を一軒一軒回って合意を取り付けた」。同地区で酪農を営む古山浩史さん(56)が、線路脇の圃場(ほじょう)を見つめながら言う。2年前は50枚ほど圃場があり、多くが遊休化していたが、現在は約10枚に大区画化。利用権も、地権者約20人から担い手2人に集積された。

 同地区では16年度、農地41ヘクタールのうち、同機構を通じて9ヘクタールを担い手に集積。担い手への集積面積は19ヘクタールに伸びた。この集積を実現させた中心人物が、地域で農地利用の合意形成を担う、農地利用最適化推進委員の古山さんだ。「特に高齢世代は自分の土地にこだわりがあり、将来を見て誰かに任せようという話し合いも乏しかった」(古山さん)が、地権者への戸別訪問で将来の農地利用の意向を確認、市と連携して機構に関する説明会を開くなどで合意を形成した。

 機構による農地集積の根本にあるのが、こうした合意形成を図る地域の地道な努力だ。だが、農水省が策定を呼び掛ける「人・農地プラン」の状況は、地域の合意形成の広がりに欠ける。

 同プランは、誰が農地の貸し手となり、誰に農地を集めるのかを盛り込むもので、同省は集落単位などで策定し定期的に見直すよう求めている。茨城県では3月末時点で、策定予定がある全245地域で策定済みだが、肝となる、農地の貸し手が特定されているプランは36%にとどまる。プランの策定が担い手が国の助成事業を受ける要件になっているため、市町村が策定を優先し、本来あるべき農地を巡る話し合いが不十分なままの地域も多いのが実態だ。

 同県は今年度から、機構、農業会議と連携して、農地の全筆調査に着手した。農地一枚一枚について所有者や耕作者、貸借の意向を3年かけて把握する。こうした基礎的な情報を現場の市町村や推進委員らで共有し、地域の合意形成の契機にする狙いだ。

 農地を機構に貸し付ける農家への協力金の支払いや固定資産税の軽減など、機構による集積実績の確保に傾注する政府。一方、人・農地プランの見直し経費への支援措置もあるが、自治体関係者からは「助成額はわずかで、地域の取り組みを促すには心もとない」との声も上がる。

 茨城県の機構によると、これまでの集積実績には、もともと決まっていた基盤整備事業の際の権利移動を、機構に付け替えるなどしたケースも多いという。こうした実績に“つながりやすい”ケースは全国的にも一巡し、機構の実績は停滞している。茨城県の機構幹部は「8割の農地を担い手に集めるという政府目標ありきでなく、地域の話し合いという地道な取り組みをいかに促すかが、より問われることになる」という。

 機構が担い手に新たに集積した面積は17年度で1・7万ヘクタールで、15年度の2・7万ヘクタールから2年連続減。17年度の担い手への新規集積面積は、機構以外による2・4万ヘクタールを合わせても、23年度に農地の80%を担い手に集める政府目標の達成に必要な面積の27%にとどまる。

 政府は、2023年度までに、担い手への農地集積を8割にする成長戦略の数値目標(KPI)を掲げる。だが、思い通りに集積は進んでいない。なぜ進まないのか。そのエンジンと期待された農地中間管理機構(農地集積バンク)にどんな課題があるのか。産地の今を追った。

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