[検証 農政改革][農地集積の今 2] 機構の限界(愛知) 中間管理は機能せず 円滑化事業も「残して」

地域の農地集約に向けて話し合う加古さん(左)ら(愛知県西尾市で)

 農地中間管理機構(農地集積バンク)は農地の「中間的受け皿」。出し手と個別交渉は必要なく、機構が農地をいったん預かり、集約して担い手に転貸する──。農水省は今もこう説明する。

 しかし「機構だけではそこまでできない」と、愛知県西尾市の稲作農家・加古清貴さん(43)。機構を活用し、3軒の担い手を中心に地域の農地約90ヘクタールの集約を目指している。現在、機構や県、同市が管内のJA西三河などを交えて話し合いを進めているが「地権者からの合意も担い手同士の利用権の交換も、自分たちで動かないと難しい」とする。

 機構は農地集約の切り札と期待された。だが、「そんな体制も予算もない」(安藤光義・東京大教授)のが現状だ。県段階の設置で人員が限られ、現場からも遠いため、推進実務はJAや市町村に委託。受け手の見つからない農地は管理費用がかかるため、引き受けられない。地域の合意を前提に「機構を通して借りるだけ」(JA関係者)の場合が多い。

 機構は、手続きも県段階を経由するため時間がかかる。農水省は3カ月程度とするが「半年はかかる」(同市の複数の農家)との声もある。機構で借りた農地の利用状況の報告書も煩雑と不評だ。1筆ごとの作付け、作物ごとの収穫量などを記入し、毎年提出する。

 「時間はかかるし、報告書も負担。無理して使おうとは思わない」。

 JA西三河農作業受託部会長の市川茂弘さん(50)。水稲や麦、大豆を栽培する34ヘクタールの農地のほとんどは農地利用集積円滑化事業を活用して集積し、機構に切り替えたのは1・2ヘクタールにとどまる。

 同事業はJAなどを通じて農地の転貸などをする制度で、愛知県では前身事業から盛んに使われてきた。現行の機構が中間的受け皿となっていないため、同事業は機構と「ほとんど同じ仕組み」(複数県の機構関係者)だが、最短1カ月程度で借りられ、報告書も不要。機構は10年程度の貸し付けが原則だが、同事業は柔軟に設定でき、地権者の抵抗感も少ない。

 JA西三河も円滑化事業で担い手に農地を集積してきたが、現在は機構の業務を受託し、円滑化事業からの切り替えも進める。だが、切り替え時には出し手メリットの機構集積協力金の対象とならない場合もあり、JAの太田知宏営農企画課長は「機構の活用を促しているが、『円滑化事業でいい』と言われることも多い」と明かす。

 実際、JAを通じた西尾市内の円滑化事業による貸し付け面積(6月時点)が前年比22ヘクタール増の2126ヘクタールだったのに対し、機構の実績は同13ヘクタール増の238ヘクタールだった。県全体でも、機構設立の2014年度から17年度までの円滑化事業による新規貸し付け面積は計約2400ヘクタールで、同期間の機構の実績1664ヘクタールを上回る。

 こうした中、農水省は円滑化事業と機構の一本化も検討する。だがJAグループは、地域実情を踏まえた取り組みの多様性確保のため、円滑化事業の継続を求めている。 
 

活用に地域差


 農地利用集積円滑化事業による農地の権利移動は、機構の創設に伴い、14年度以降はピークだった13年度の3分の1程度の約1・8万ヘクタールで推移するが、16年度では、北海道や愛知など6道県で実績の約6割を占め、依然、活用が盛んな地域もある。16年度ではJAが仲介役となった権利移動が6割を占め最多で、公社、市町村などと続く。

おすすめ記事

農政の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは