大震災からの復興 食と農の未来像に期待

 東日本大震災と 東京電力福島第1原子力発電所事故からの復興に向け、被災地で新しい取り組みが芽吹き始めた。水稲と野菜を組み合わせた法人経営や農業生産工程管理(GAP)取得などは、国内農業の課題解決にもつながる。被災地が食と農の未来像を示し、国内農業のけん引役となることに期待したい。

 法人を軸とした地域農業の振興が今、被災地を含め各地で進んでいる。被災地の取り組みで注目したいのは、これまで水稲が主力だった地域で品目構成を見直し、野菜を取り入れて複合化している点だ。震災後、発足した沿岸部の法人代表の多くは「経営を軌道に乗せるには、米だけではやっていけない」との意識を持ち、野菜を新たな収益源と位置付ける。

 仙台市の沿岸部、井土地区に設立した農事組合法人・井土生産組合は、津波被害で営農を断念した農家の水田、畑100ヘクタールを集積。米と野菜の複合経営で収益を確保することを重視し、ネギなどを主力品目として確立した。JA仙台、JA全農みやぎを通じ業務用として販売する。こうした農家やJAによる挑戦は、新たな経営モデルを生み出すベースになっていく。米の生産調整見直しに伴い、水稲経営の在り方が問われる中、大きなヒントになる。

 原発事故後、農家が営農中断を余儀なくされた福島県飯舘村では、7月下旬から事故後初となる小菊の出荷が始まる。JAふくしま未来が県と協力し、試験栽培を経て初出荷のめどが立った。JA職員が栽培経験のない農家の相談に乗り、サポートする。所得確保のために新たな品目を導入し、定着を目指す飯舘村の取り組みは、農業者の所得増大をはじめとしたJAの自己改革と重なる。

 GAP取得を通じて「風評被害」を払拭(ふっしょく)し、福島県産農産物の適正な評価と信頼される産地づくりを目指す取り組みも本格化してきた。日本一のGAP取得率と東京五輪・パラリンピックへの県産食材の供給を目指し県とJA福島中央会は「ふくしま。GAPチャレンジ宣言」を打ち出した。現場では作業手順や環境の改善などを促し、県内各地で認証取得が進む。

 県や中央会、JA全農福島などが発足させた「ふくしまプライド。フードアクション推進協議会」は、五輪出場選手らへの食材提供に加え「五輪後も販売者を確保し、福島プライドを再構築」(内堀雅雄県知事)する考えだ。外国人に県産品を食べてもらう機会を増やそうと、商談会やバイヤーツアーなどを予定する。

 福島からの発信は復興だけでなく、日本農業の技術水準や安全性の高さを改めて世界にアピールすることにつながる。復興を大きな成長へと昇華させるには現場の努力だけでなく、国による息の長い支援が欠かせない。

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