家族経営協定 “働き方改革”の手段に

 働き方改革法が成立したが、農業界には女性を中心にした柔軟な働き方がある。家族間でルールを決め、働きやすい職場をつくる「家族経営協定」だ。近年は活用メリットが、過重労働の改善や経営計画の達成、女性の社会参画後押し――と広がってきた。新規就農を支えるためにもさらに活用を進めたい。

 家族経営協定は経営方針、労働時間や休日取得、給料といった就業条件を決めるもの。家族農業は営農と暮らしが切り離せず、内容が家事や育児、介護といった生活面での役割分担にも及ぶのが特徴だ。締結の目的は、①話し合いと男女の共同参画で経営を充実させる②一人一人が尊重される家族関係をつくる③次世代に経営をスムーズに引き継ぐこと――としている。

 締結の動きは1995年、農水省が各地方に出した通知「家族経営協定の普及推進による家族農業経営の近代化について」を機に広がった。女性や後継者の地位と役割を明らかにし、経営のパートナーに位置付けることを目指した。締結数は96年の5335戸から2017年には5万7155戸と伸びている。

 本紙くらし面では、「今どき家族経営協定」を連載中。普及から約20年がたち、内容にも変化が見られる。

 中でも、協定を活用した「過重労働の改善」は今どきの内容だ。農業は休みがなく働き通しというイメージがあり、それが後継者・担い手不足の一因となっている面もある。連載で紹介した夫妻も、新規就農直後は過重労働に陥った。そんな2人を救ったのは、「家族経営協定で経営や労働環境を見直してはどうか」という県の普及指導員の一言。栽培管理や直売所運営、暮らしの作業を見直し、効率化や省力化を進めた。

 その結果、売り上げが伸びて週休と旅行休暇の獲得につながった。「生活と仕事のバランスが取れると成果が上がる」という好事例だ。農水省の実態調査では類似事例が散見される。

 他にも、経営計画の目標を達成したり、輸出の実現に結び付いたり、地域活動も農業経営の一環と位置付けて“社会参画費”として給料に上乗せしたりしている事例もある。

 ただし、協定を締結するだけでは成果は生まれない。実現に向けた地道な話し合いと、関わる人全員の合意こそが重要だ。就農や結婚、子育て、経営移譲、老後の備えなど人生の各段階で状況が変わるたびに内容を見直すことも大切だ。

 JAや行政には、女性や後継者が経営に参画しやすい環境をつくるための支援を求めたい。農業技術や経営の知識を得る研修と同時に家族経営協定の勧めや見直しを働き掛けてほしい。

 農業版の働き方改革が進み、誰もが働きやすい環境になれば、今までにない層からの志望者が増えるはずだ。新しい担い手を見守り支える有効な手法として、家族経営協定を活用したい。

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