米中貿易紛争 話し合いで早期解決を

 世界経済が無益な混乱に陥る恐れがある。米国と中国が制裁関税の発動に踏み切った。本格的な貿易戦争に発展する前に、話し合いによる解決を目指すべきだ。

 対立激化の原因の一つに、米国の貿易赤字がある。半分を中国が占め、トランプ米大統領は、「米国人の雇用が奪われている」などと敵視する。赤字解消に向けた米中「100日計画」も目立った成果は見られず、米国の対中貿易赤字は増え続けている。

 トランプ大統領は、このままでは11月の中間選挙は戦えないと強硬手段に出たのだろう。中国の知的財産権侵害を理由に、米通商法301条に基づき、段階的に追加関税を強化する。中国も「脅しに屈しない」と全面的に対抗する姿勢だ。どちらが先に音を上げるかを争うようなチキンレースに勝者はない。

 米国の危機感は理解できるとしても、一方的に制裁を課すのは、世界的な混乱につながるだけだ。鉄鋼とアルミニウムの追加関税には、欧州連合(EU)やカナダ、メキシコ、ロシアも報復関税で対抗している。米国は、特定国や地域を狙い撃ちするような制裁は慎み、少なくとも国際ルールに基づくべきだ。

 中国の姿勢も理解に苦しむ。対抗措置として米国製品に25%の関税を上乗せした。この中には自動車に加え、大豆や小麦、牛肉などの農産品が含まれる。トランプ大統領の支持基盤を狙ったことは明白で、いたずらに米国を刺激するものだ。

 米中両国は、経済の相互依存が強い。米国の総輸入額に占める中国の割合は2割を超え、中国の総輸出額に占める米国の割合も2割近い。国内総生産(GDP)は両国で世界の4割にも及ぶ。制裁合戦が両国経済活動の障害となり、世界経済の後退につながる恐れがある。

 米国が主導してきた世界貿易機関(WTO)体制の試練でもある。貿易紛争が多発する中、紛争処理機能の遅延化と弱体化が指摘されている。早急に立て直す必要がある。トランプ米大統領は「WTOは何年もの間、米国をひどく扱ってきた」などと述べ、脱退をほのめかしている。そうした態度は、混乱をもたらすだけだ。

 世界が安定した成長を実現するには、貿易不均衡を生み出す新自由主義から離脱し、持続可能な開発目標(SDGs)の考え方に切り替える必要がある。その上で、貿易上有利に働いているとされる中国の途上国扱いや知的財産権侵害、為替問題の解決に向けてWTOの場で議論すべきだ。

 米中は、貿易戦争に拡大するような事態は回避しなければならない。米中に次ぐ経済大国である日本の役割も重大だ。行き場を失った米国の農畜産物が日本市場になだれ込む恐れがある。

 両大国に言うべきことはきちんと言う。安倍政権の外交の真価が問われている。

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