もえるような濃い緑の中に

 もえるような濃い緑の中に、ふわふわで薄紅色の花が浮き立つ▼ちょっと遠出をして久しぶりに森林浴に浸っていたら、真綿のような花に引き寄せられた。ネムノキである。羽毛のようなピンクがいい。顔を近づけると香りが甘い。「合歓の花」は夏の季語。植物学者の本田正次さんは、『俳句歳時記』(平凡社)の中で「水の上に散ったり、畦(あぜ)に散り敷くさまは風情が深い」とした。俳人加賀千代女の一句を引く。〈そのすがた人にうつすやねぶの花〉▼ネムあるいはネブの名は、夜になると向かい合う小葉が閉じて“就眠”することに由来する。漢字の「合歓木」は、夫婦円満につながる中国の伝説に基づく。不機嫌な夫に花を入れて酒を飲ませると機嫌が良くなったという。ぜひお試しを▼女優の宮城まり子さんが設立した体が不自由な子の養護施設「ねむの木学園」は、静岡県内に用地を探しに行った時に、風に舞う花に触れたことにちなむ。展覧会やコンサート活動などを通じて、表現や造形による人間育成に取り組んできた。「一生懸命にやってまいりました。苦労したという思いはありません」。91歳の宮城さんの執念に打たれる▼きょうは「なないろ」の語呂合わせで「虹の日」。宮城さんが希望の懸け橋を築いて、50年になる。 

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