農家と国際政治 輸出大国のしたたかさ 特別編集委員 山田優

 ロシア政府は12日、4年前に導入した欧米からの食品輸入禁止措置を来年末まで延長することを決めた。ウクライナのクリミア半島をロシアが一方的に編入したことに反発し、欧米が経済制裁を導入したのが2014年。逆にロシアは欧米やオーストラリアなどからの肉や乳製品、野菜などの輸入を禁じ対抗した。それが今回の決定で5年間も続くことになった。

 先週末にオランダ北部の野菜栽培農家ピーター・アップルマンさんの農場を訪ねた。青果物輸出が盛んな同国は、ロシアの突然の禁輸で大きな痛手を受けた。

 200ヘクタールある大きな農場の集荷場で、ポーランドから来た労働者に作業を指揮しながら早口で話しだした。

 「ロシアにブロッコリーなどを出していたが、突然市場を失ったのは確か。しかし、新たに中東の市場を開拓して乗り越えた。今さらロシアが禁輸を延長しても影響はない」

 アップルマンさんは、過去の話にはあまり興味がないような口ぶりだった。現在の主な顧客には英国やアイルランドのスーパーマーケットなどが並び、潜在的な市場を探して経営主自らが飛び歩く。輸出を手掛ける以上、国際政治の火花が自分の経営に及ぶことは避けられない。一つの国に過度に依存しないようバランスを取ることが、経営者として大切だと考えているからだ。

 アップルマンさんの家から程近い、種ジャガイモ栽培をするヨハン・バレドレクトさんの農場には、別の国際政治の影が忍び寄っていた。かつて大切な販路だった中東シリア向け種芋が、戦火による混乱で輸出できない状態になっている。種芋を買ってジャガイモを栽培できるような農家が激減したからだ。

 そこで、バレドレクトさんが新たに注目したのはロシア。ロシアは欧州から青果のジャガイモ輸入を禁じているものの、種芋となると話が別だ。

 バレドレクトさんは、うれしそうに笑いながら次のように話した。

 「彼らも輸入を禁じた以上、自分たちで作らないと困る。だから高品質の種芋輸入を増やす必要がある。今はロシア向けで稼がせてもらっている」

 米国と中国やカナダなどの貿易摩擦が過熱し、大豆や牛肉を含めた農産品が当たり前のように制裁関税の対象になっている。ある日突然のように市場を失えば、輸出をしている農家がしわ寄せを受けるのは避けられない。オランダが農業の輸出大国を誇っていることは知られている。国によって事情が異なるから、輸出額の多い少ないにはあまり関心がないが、オランダ農家のしたたかさには舌を巻く。

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