[検証 農政改革][農地集積の今 3] 中山間地(島根) 競争より営農持続を 効率偏重 格差の拡大招く

弥栄町全体での機械や人手のサポートを力に、法人設立に踏み切った山本さん(右)(島根県浜田市で)

 農地中間管理事業は、条件の良い農地を担い手に集積・集約し、効率的で競争力の高い営農を目指す。だが、中山間地では条件不利地が多く、その農地をなるべく担い手に負担をかけないよう皆で支える持続的な営農を進める。人と農地の多様性を考慮せず「担い手への集積」という一律の目標を課して支援を集中させれば、平場との格差が拡大・固定化しかねない。

 島根県西部の浜田市弥栄町。人口約1300人の小さな町に3月、農事組合法人はつらつ大坪が設立された。経営面積は8ヘクタール。県内で増えつつある、小規模法人だ。

 大坪集落には機械利用組合があったが、栽培は原則個々で行い、集積の受け皿となる大型農家もいない。管理が難しくなる農家がいれば周囲が支えていたが、法人代表の山本久男さん(54)は「高齢化で、反(10アール)どころか町(1ヘクタール)単位で農地が空く恐れがある。個の力では限界に来ていた」と語る。

 町内には、担い手不在集落が多い。五つある法人もオペレーターが不足し、運営には周囲の支えが必要だ。そこで2016年9月、13の集落営農組織が集まり、一般社団法人奥島根弥栄を設立。米販売や資材の購入を共同で行い、ドローン(小型無人飛行機)による水稲の共同防除も始めた。予約面積は60ヘクタールと町の全農地の3分の1に上った。

 14年に全26集落で「人・農地プラン」をつくり、15年には中山間地域等直接支払制度の協定を広域化した。その都度、浜田市弥栄支所の職員が全集落で座談会を開き、町全体で農地を守る意義を訴え続けてきた。

 同支所の岡田浄係長は「農地中間管理機構(農地集積バンク)も活用はするが数字は結果にすぎない。中山間地にとって農業は単なるなりわいではなく地域を守る手段。持続的な営農を行う知恵を評価し、支える制度にしてほしい」と話す。

 約3000ある集落の3割が担い手不在とされる島根県。農地を預ける受け皿にさえ困るのだから、事業の成果を出すには厳しい環境だ。

 それでも17年度は好成績を残した。バンクが転貸した新規面積は403ヘクタール。集積目標に対するバンク寄与度は26%と全国2位だった。バンク業務を担うしまね農業振興公社は、農業委員会など関係組織と連携を深め、農地貸借の更新を迎える農業者や基盤整備が進む地域に、積極的にバンク活用を提案してきた。

 成果は出したが、注文はある。同公社は「農地条件が全然違う中、一律に数字を求められると厳しい。人・農地プランの中心経営体で地域の信頼が厚い農家も、認定農業者でないと『担い手』にはなれないのも実態に合わない」と指摘する。 

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