[検証 農政改革][農地集積の今 5] 米価不安(岩手・栃木) 経営拡大 踏み切れず 見通せぬ収入 労力不足も

伊東さん(左)が「どんぴしゃり」を作付けした水田(盛岡市で)

 「今は作付け拡大より経営の安定が優先だ」。盛岡市厨川地区で稲作4・3ヘクタールを手掛ける認定農業者の伊東善幸さん(45)は、稲の分けつが進む水田を見ながら、そう強調する。所得を増やす選択肢に経営拡大があるが「収入が見通しにくい中ではリスクを伴う」と慎重な姿勢を示す。

 政府は担い手への農地集積を進める一方、規模拡大に慎重な担い手も多い。米価下落への不安感と労力不足の課題が重くのしかかるからだ。

 伊東さんは現在、業務需要が見込める多収性品種「どんぴしゃり」を主力に、高価格が期待できる県の新品種「銀河のしずく」も採用。売れる米作りを進めるが、米直接支払交付金が廃止されるなど米政策が大きく変わったこともあり「需給動向は読みにくい」と感じる。2011年に父親から農業を引き継いで以降、米価の乱高下を目の当たりにしてきただけに、これからの米価動向への懸念は大きい。

 トラクターやコンバイン、乾燥機など現在の設備をそろえるのに2000万円程度かかった。大幅な経営拡大に踏み切れば「新たな投資や人手を確保しなければならない」と課題を挙げる。

 同地区は「人・農地プラン」で地域の中心となる経営体に2法人、約20人の認定農業者を位置付ける。市によると、担い手への農地集積率は3、4割(17年度末現在)にとどまる。

 同地区の稲作農家でJAいわて中央水稲生産部会盛岡支部長の遠藤茂哉さん(64)は「5年、10年後にリタイヤする農家が増える」とみる。農地を預けたい要望が強まり担い手に焦りもにじむが、遠藤さんは「経営拡大は時間をかけて進めるべきだ」と受け止める。

 栃木県栃木市の農事組合法人まがのしまは、11年の発足当初から将来的な米価低迷を見越した投資、経営をしてきた。面的集積にこだわり、大区画化や大型農機の導入を進めた。経営耕地面積は20ヘクタールからスタートし、現在は87ヘクタールに拡大した。

 法人の佐山耕基理事は、大区画化された水田を前に「米価が下落しても地域の農業を維持していくため条件の優れない場所を含め、面的な集積が欠かせない」と話す。

 法人では、集積後の作業効率を高めるため、大型農機が使いやすいよう農水省の補助事業を活用し、大区画化などを進めた。主な農産物は米と麦、大豆、ニラ。農機の稼働率を上げるため、米は主食用と飼料用を組み合わせて収穫期間を延ばすなどの工夫を凝らす。集積に対応できる経営の構築に力を入れてきた。

 佐山理事は「これまで黒字経営を維持し、集積を進めてきた。これからも集積を続けていくには、米価を見通しながら、経営体質をより強くしていくことが欠かせない」と指摘する。
 

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