災害から命守る鍵は… 共助 住民同士が地図作り 長野

集落の地図を囲み地域の防災を話し合う住民

集落に続く1本道。土砂災害で寸断されると孤立化する危険性がある(ともに長野県大桑村で)

 西日本豪雨では、土砂災害や洪水などの自然災害で多くの犠牲者が出た。こうした緊急時に力を発揮するのが、住民が支え合う「共助」だ。共助の防災を推進する長野県では、災害時に自力避難が難しい高齢者や障害者らを手助けするため、住民が主体となって防災マップを作っている。鍵となるのは、作成過程で住民同士が話し合うこと。いざというときに助け合える関係づくりをマップが後押しする。(猪塚麻紀子)
 

地域の状況共有 大桑村


 7月上旬の夜。長野県大桑村の殿、小川地区の高齢者や若者ら36人が集会所に集まった。災害時に活用する「住民支え合いマップ」を作る集会だ。

 「この道は土砂が抜ける。避難ならこっちを通った方がいい」。住民が地図上に印を付けたのは、1923年の土砂災害の発生地。村全域で多くの死者が出たという。

 マップには、こうした危険箇所や避難場所などに印を付け、災害時に手助けが必要な高齢者や手助けする人の住居も記載する。防災の専門家による分析やハザードマップを基に、住民の経験や伝承、日頃から気になることなども反映させ、災害時の効果的な防災やスムーズな避難につなげる。

 マップ作成は、災害を経験したことがない住民や若い世代へ災害時の心構えを伝える役割も果たす。救助隊が間に合わないときでも、住民が助け合って被害を軽減し、普段からの高齢者の見守りにもつなげる狙いだ。

 集会で講義した災害時地域助け合い研究会の中橋徹也代表世話人は「行政による防災と住民主体の助け合いマップで、2段階の防災ができる。お年寄りのことを考えて早めに避難するなど、被害の軽減に結び付く」と指摘する。

 殿地区の小羽根弘夫さん(74)は「マップで地域の状況を改めて確認できた。助け合っていきたい」と話した。
 

犠牲者ゼロに 白馬村


 2014年に発生した長野県神城断層地震。白馬村では40棟以上の家屋が全壊するなど、甚大な被害に見舞われたが、地域住民が協力して安否確認や救助活動を行い、犠牲者が一人も出なかった。

 県社会福祉協議会によると、支え合いマップが作られていたことに加えて、日頃からの近所の付き合いが築かれていたことが奏功した。

 同協議会は「マップは地域で助け合う関係を“見える化”するもの。見直すために集まって話し合うことも関係づくりを後押しする」と話す。
 

コミュニティー構築を


 住民同士が助け合う「共助」の防災は、東日本大震災を機に広く認識されるようになった。政府が発表した2018年度の「防災白書」によると、阪神・淡路大震災では、多くの人が自力か家族、隣人らによる「自助・共助」で救出され、「公助」の消防、警察、自衛隊による救出は1.7%にすぎなかった。

 こうした実態を踏まえ内閣府は14年、地区ごとの住民が共助で防災対策を検討する「地区防災計画制度」を開始。自治体が定めた避難所以外でも、民間施設の避難所で救援物資の公的な支援を受けられるなど、共助の防災を支える。

 ただ、自治体の間でも制度に対する認知度が低いとの指摘もあり、計画策定はなかなか進んでいないのが実情だ。

 防災科学技術研究所の李泰榮主任研究員は、防災計画を作ることが正解ではないとした上で、「重要なのは日頃から顔が見える住民同士のコミュニティーを築くことだ。イベントなど住民が集まる場で防災の話をしたり、例えば焼き芋大会をしたりするだけでも防災の一歩になる」と話す。

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