西日本豪雨 農業用ため池緊急点検 危険性だけ独り歩き? 「管理不備」に農家困惑 広島

地域の営農を支えてきた「滝原池」の流木を取り除く平本さん(広島県東広島市で)

 西日本豪雨で農業用ため池の決壊や損壊が相次いだことから、被災地の農家や自治体が緊急点検を進めている。今回の豪雨では、ため池について、農家の管理不備を指摘する声や、被害防止に向け、その必要性を問う声も上がる。自治体や農家からは「河川の堤防も決壊するほどの豪雨で、ため池だけがリスクがあるとは一概にいえない。農家はこれまで適正に管理してきた」との声が上がる。営農にため池が欠かせない地域も多く、慎重な調査・分析を求めている。(尾原浩子)
 

「営農に欠かせぬ」 意義訴え


 広島県東広島市西条町の三つの地区の農家約100戸が利用するため池「滝原池」。郷曽地区の農家、平本隆登さん(65)が炎天下、ため池の流木を取り除く。既に自治体の担当者や農家らと点検しており、ドローン(小型無人飛行機)を飛ばして周辺部も確認したが、決壊の恐れはなく、破損もしていなかった。ただ、平本さんは、西日本豪雨の報道では、ため池の危険性だけが強調されているように感じている。「この地区は、ため池がなくなれば農業が一切できない。大水害の中で、ため池だけ危険性を指摘されるのは農家としてつらい。ため池の大切さを知ってほしい」と平本さん。

 これまでも農家らと、周辺の雑木を伐採するなど管理を怠ったことはない。老朽化で対策が必要なため池は「国の責任でしっかり補修する問題だ」と考える。

 同市は現在、ドローンを活用するなどで地元農家と共にため池の状況調査を行い、段階的に水を落とす作業を進める。県によると、同市だけでなく、ため池のある各市町が農家と共に調査を進めている。1万9600を超すため池のうち11のため池が決壊した理由について県は「高齢化でため池に関わる農家が減っていることは事実だが、想定以上の豪雨だったことに尽きる」(農業基盤課)と説明する。

 全国で最も多い4万近くのため池がある兵庫県では、豪雨で1カ所が決壊した。県は「後ろの山の土砂が流入したが、県では決壊とは捉えていない。農家の管理に問題はなかった」(農村環境室)とする。福岡県筑前町の「中島ため池」も今回の豪雨で決壊したが、水管理の代表で農家の井上厚さん(78)によると、「堤防が水を含み、飽和状態で耐えきれずに滑り落ちたと推測している。農家で手分けして管理はしっかりしていた」と話す。

 農水省によると、決壊した場合、下流などに被害を招きかねない「防災重点ため池」は西日本を中心に1万カ所以上、老朽化で工事などの対策が必要なため池もある。

 早稲田大学の西原是良助教は「同水準の管理体制のため池が多くある中で、何が破堤発生の有無を分けたのかを調べる必要がある」とみる。西日本豪雨はため池だけでなく、河川の氾濫や堤防の決壊が相次ぎ、道路や農業用水路も破損するほどだった。

 西原助教は農家の管理体制だけでなく、「周辺からの流木、満水までの時間、洪水吐などの設備といった網羅的にため池を調査するべきだ」と指摘する。

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