林業改革の問題点 林家よりも企業優遇 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏

 特定企業への便宜供与が疑われる規制改革が後を絶たない。民有林の森林経営管理法と改悪・国有林野管理経営法もそうだ。今年、民有林について「経営意欲の低い経営者」から強制的に木材産業(素材生産業者など)にその管理・伐採を委託する法律が成立した。

 アンケートの回答が「現状維持」(72%)、「規模縮小」(7%)の意向の経営者をまとめて、「経営意欲の低い経営者」が8割だとしたのも問題だが、「経営意欲が低い」と判断されると、強制的に経営権を剥奪され、受託企業がそこの木を伐採して収益を得ることができる。無断で人の木を切って販売して自分の利益にするというのは、盗伐に匹敵するほどの財産権の侵害で、憲法に抵触する。

 そして仕上げとして、来年には国有林についても、その管理・伐採を委託できる法律が準備されている。これは国の財産を実質的に企業にタダで払い下げることである。

 しかも、その最大の受け皿は大手リース企業が展開する木材チップによるバイオマス発電事業といわれている。これを支援するために、震災復興税の事実上の無期限延長である森林環境税(1人1000円)も投入される。二酸化炭素を貯留する森林環境を守るためでなく、その逆の伐採してしまう方に税金まで投入して助け、チップで発電した電力は固定価格買取制度で比較的高い単価で支援される。

 至れり尽くせりの便宜供与を受けるのは、急展開で企業が農地を買えるようになった某国家戦略特区に手を挙げたのと同じ企業である。

 こうした中、西日本を中心に未曽有の豪雨と大洪水により取り返しのつかない被害が発生した。そもそも、環境負荷のコストを無視した経済効率の追求で地球温暖化が進み、異常気象が頻発し、ゲリラ豪雨が増えている。

 狭い視野の経済効率の追求で林業や農業が衰退し、山が荒れ耕作放棄地が増えたため山は「鉄砲水」を起こし、水田のダム機能も失われ、ゲリラ豪雨に耐えられず洪水が起きやすくなっている。全国に広がる鳥獣害もこれに起因する。全て「人災」なのである。

 1964年に丸太の関税が撤廃され、外材に押されて国産材はペイしなくなり、木材自給率は一時18%まで落ち込んだ。間伐などの手入れがされないと日光が林内に入らず、下草などが育たず土壌も貧弱になって洪水緩和機能が低下する。

 貿易自由化で追い込まれた中でも、何とか頑張ってきた林家に対して、今度は「経営意欲が低い」として、特定の企業が「盗伐」してもうけてよいという。しかも、伐採が増えてハゲ山を増やしかねない事業に森林環境税で手助けして、さらに異常気象と洪水発生を頻発させていくという悪循環がこのまま許されてよいのであろうか。

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