給油所住民運営奮闘 “農村のインフラ”閉鎖させぬ!

住民が立ち上げた給油所。週3日、時間を区切って運営を工夫する(北海道占冠村で)

 住民が主体となった地域運営組織などが経営する、公設民営の給油所が目立ってきた。資源エネルギー庁が7月にまとめた統計では、全国の給油所はピーク時に比べ半減。公共交通機関が縮小している中での給油所の減少は、生活や営農を脅かすことから、住民が自ら運営に乗り出している。こうした運営を支えるJAもある。ただ、過疎地の給油所はいずれも経済的に厳しいのが課題だ。(尾原浩子)
 

財源確保に課題も 北海道占冠村


 人口448人が暮らす北海道占冠村トマム地区の住民らは2017年、給油所を開設した。村の中央部にある他の二つの給油所から30キロ離れた、地区唯一の給油所だ。営業日は1日3時間、週3日。人件費がかさむ上、村内の他の給油所との競合を避けるよう営業時間を工夫した。

 畑作と畜産、林業を複合経営する農家の江頭一馬さん(19)が「トラクターやチェーンソーを使う農家にとって、近場で油が買えるのはとても助かる。給油所は、農村のインフラだ」と大切さを強調する。利用者は1日平均13人。雪で道路が閉鎖されて“陸の孤島”となるときもある同地区。冬場の灯油の供給も担い、住民にとって欠かせない存在だ。

 かつて地区には民間企業が経営する給油所が2カ所あったが、採算が悪化して13年に撤退。村民アンケートで給油所の撤退に不安を訴える意見が続出したことから、給油所運営のために住民有志が地域運営組織「一般社団法人トマムスタンド」を立ち上げた。村は施設を修繕し、公設民営として同法人に運営を委託して再開にこぎ着けた。

 運営には課題もある。江頭さんらが農業の傍らスタッフとして働くが、従業員確保は“綱渡り”の状況。財政も厳しく、村からの指定管理料の年間960万円がなければ経営は成り立たない。

 村によると、政府の地方創生関連の補助金は条件に合わず活用できないため、給油所の修繕費も村が自費で拠出した。村トマム支所の平川満彦支所長は「給油所は子育てにも営農にも関わるライフライン。財源の確保は小さな村にとって切実。こうした生活基盤への支援が欲しい」と訴える。
 

「公設民営」で存続へ


 同庁の7月のまとめでは、17年度末時点の給油所数は全国で3万747と過去最少で、ピーク時の94年度末(6万421)と比べ半減した。需要の低迷に加え、老朽化する貯蔵タンクの改修が消防法の改正で義務化されたことも、経営を断念する給油所が増えた一因だ。鳥取県226、奈良県269、福井県280など、中山間地域を抱える自治体で給油所が少ない。

 同庁は給油所が3カ所以下の自治体を「給油所過疎地」と定義する。公設民営の給油所数は統計がないが、給油所過疎地では、閉鎖した給油所を地域ぐるみで再開させたり存続させたりする動きがある。

 奈良県川上村では17年4月から、村民や村の関係団体が組織化した「一般財団法人 かわかみらいふ」が公設民営で給油所を運営する。村唯一の給油所の経営者が高齢で閉鎖することを申し出たことから、同法人が給油所経営や灯油の配達などを担うことになった。

 地域運営組織による給油所経営を支えるJAもある。高知県JA土佐れいほくは、住民が出資してつくった「合同会社いしはら」の燃油の仕入れに協力。長野県阿智村では住民が運営する給油所に対し、JAみなみ信州がタンクの新設などで協力した。
 

JAと連携を


 農村経済学を専門とする大分大学の山浦陽一准教授は、そもそも既存の給油所が撤退せざるを得ない厳しい経営環境であることから「地域運営組織が経営することは簡単なことではない」と指摘。その上で、JAの役割について「施設の提供や流通面のサポートと同時に、給油所の活性化に向けて組合員や地域運営組織との連携が期待される。国は改修や運営費補助、運営ノウハウの共有の他、地域運営組織への支援が必要だ」と訴える。 

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