西日本豪雨被災地 不安の1カ月 よぎる「離農」2文字

決壊した川からの濁流に破壊されたハウスを調査するJA職員(岡山県総社市で)

携帯電話で災害補償について話しながら、苦渋の表情を見せる二宮さん。農道には崩れ落ちた巨大な岩が転がっていた(愛媛県宇和島市で=江口和裕写す)

 西日本豪雨から1カ月。被災した農家は甚大な被害に直面し、営農再建への不安を募らせる。農道やかん水施設など、産地を支えるインフラは復旧するのか、ハウス再建にかかる費用や、ミカンをはじめ果樹が再び出荷できるまでの収入をどう捻出するのか──。苦境に立たされた農家の頭を「離農」の2文字がよぎる。地域の農業を維持するには、前例にとらわれない施策が必要だ。(橋本陽平、丸草慶人)
 

逃げ場なし 再建 切望 岡山県倉敷市


 「私たち専業農家は、ここで農業を続けて生計を立てるしか選択肢がない。逃げ場がないの」──。夫と息子夫妻の4人で農業を営む、岡山県倉敷市真備町の山田美幸さん(62)。軟弱野菜などを育てるハウス15棟のうち9棟が水没し、使用不能となった。

 息子の就農に合わせ、2年前に建てたばかり。当時1棟110万円だった資材費は今、1・5倍に高騰し、工費を含めると1棟200万円はかかる。共済金は約400万円しか見込めず、再建にはとても足りない。

 6ヘクタールで栽培する水稲用の田植え機に乾燥機、コンバインなども水没した。水路に土砂が詰まったため、一部の水田は水を通せず干上がり、土がひび割れている。高さ1・7メートルまで浸水した自宅は床と壁の修繕が必要で、6台あった車も全て故障した。

 ボランティアの協力を得て、ハウスの撤去は済んだ。自宅を片付けながら、残ったハウスで除草など次の作付けに向かう日々だ。「悩んでも仕方がない。今できることをやるだけ」と言い聞かせるが、あらゆる資産を失った現実に向き合うと、気持ちは折れそうだ。「早く再開して収入を得ないと生活できない。いつ、どれだけ支援が入るのか見えないと次に動けない」。焦りばかりが募る。

 自力で立ち上がれない農家は、行政支援に望みをつなぐ。農水省は2日、第2弾となる「生活・生業再建支援」を打ち出した。岡山、広島、愛媛の3県も補正予算を組み、農地や農業用施設の復旧、ハウスや農機の導入を後押しする。

 岡山県を代表するブドウと桃の産地、総社市。収穫を控えたハウスや果樹園を濁流や土石流が襲った。同市と倉敷市を管内に持つJA岡山西は、被災農家を戸別に巡回し、被害状況を精査。各農家がどんな支援をどの程度受けられるか、迅速に伝えるためだ。

 JAの山本清志組合長は「豪雨災害としては、過去にない甚大な被害が出ている。農家が再建を前向きに考えられるよう前例にとらわれない支援策が必要だ」と訴える。
 

やっと畑に “惨状”今も 愛媛県宇和島市


 4人の死者が出た愛媛県宇和島市の山間部にある吉田町白浦地区。かんきつ類の園地や農道が各所で崩れ、園地にたどり着けない状況が続いていた。二宮大蔵さん(55)は2日、豪雨後に初めて被災した自分の園地に入った。そこは、山肌がえぐり取られて岩盤がむき出しになり、土砂に押しつぶされた運搬用モノレールの残骸が残されていた。

 白浦中山間集落協定の代表を務める二宮さん。被災後は地域の復旧作業に追われ、自身の経営を考える余裕はなかった。被災した園地は遠目に見えたが、「ずっと見ることを避けていた」。

 母と2人で管理する園地2・5ヘクタールのうち、1ヘクタールが被災した。現実を受け止める覚悟はつかない。無残な園地を前に「農業を続けるかやめるかは半々。少なくとも、今までの規模では続けられない」と顔をゆがめた。

 今回の豪雨は、防除やかん水作業に欠かせないスプリンクラーや収穫物を運ぶモノレールなど、産地を支える設備にも壊滅的な被害を与えた。人力による作業を余儀なくされれば作業は立ち行かない。生産者らで構成するJAえひめ南玉津共選の共選長を務める山本計夫さん(65)は「手作業の防除では1人当たり1ヘクタールの管理が限界。離農者が増えるのではないか」と危惧する。営農意欲をつなぎ止めるためにも、設備の早期復旧を切望する。 

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