牛肉関税 大幅下げ TPP11、日欧EPA 年初だと… 4月で“日豪”以下に

 米国を除く11カ国での環太平洋連携協定の新協定(TPP11)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が来年早々に発効した場合、来年4月には、早くも牛肉の関税率がオーストラリアとのEPAの関税率以下まで大幅に引き下げられることが分かった。日本は両協定で毎年4月1日に関税の引き下げを約束。来年初頭に発効の場合、わずか数カ月で「2年目」の関税率が適用されるためだ。

 牛肉の場合、現行税率は冷蔵、冷凍ともに38・5%。EPAを締結済みの豪州産には冷蔵に29・3%、冷凍に26・9%が適用されている。

 だが、TPP11や日欧EPAでは、発効日に一気に27・5%まで削減される。仮に19年1~3月に発効した場合、19年4月1日には早くも「2年目」に突入し26・7%まで下がり、日豪EPA以下となる。毎年の引き下げ幅も日豪EPAに比べて大きく、最終年の16年目には9%まで下がる。

 TPP11が発効すれば豪州は、日豪EPAより有利なTPP11の関税率の適用を受けるとみられる。豪州産は日本の牛肉輸入量の約半数を占める。国産牛肉はかつてない競争にさらされ、一層の打撃となる恐れがある。

 12カ国による元のTPP交渉で政府・与党は当初、日豪EPAの関税水準をそれ以上譲れない「レッドライン」と定めたが結果的に米国の強い圧力を受け、やむなく一層の関税引き下げをのまされた経緯がある。

 その後、トランプ米大統領はTPPから離脱したが、日本は米国復帰を促すとの理屈でTPP11を推進。豪州などに日豪EPAを上回る牛肉関税引き下げをなし崩しに容認した形だ。

 一方、米国は日本に2国間の自由貿易協定(FTA)交渉を求めている。自民党は、2国間では多国間のTPPほどのメリットは得られないとし「TPP同等の譲歩を行うことはあり得ない」(TPP・日EU等経済協定対策本部)とけん制するが、政府はTPP並みの譲歩の可能性を明確には排除していない。

 TPP11の発効を急げば、米国産牛肉は関税で一層不利になり、かえって米国のFTA要求が強まるのは必至。米国の要求をかわし続けることができるか、改めて日本の通商戦略が問われる。

 日欧EPAで、日本政府は妥結を優先し、牛肉は欧州全体の強い関心がないにもかかわらず、TPPと同水準の大幅な関税削減を認めた。EUの農相に当たるホーガン欧州委員(農業・農村開発担当)が牛肉産地を抱えるアイルランド出身で、牛肉の市場開放を主張していたからだ。

 日本政府は秋の臨時国会での日欧EPAの承認を目指す。米国を含む今後の他国との関係にも影響しかねないだけに、欧州にTPP並みの譲歩を認める必要が本当にあったかを含め、交渉の是非について国会で議論を尽くす必要がある。 

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