JR上野駅にある石川啄木の歌碑に

 JR上野駅にある石川啄木の歌碑に〈ふるさとの 訛(なまり)なつかし停車場の 人ごみの中に そを聴きにゆく〉。やはり故郷は心和む▼「おはよう名歌と名句」選者で俳人の宮坂静生さんが唱える“地貌(ちぼう)季語”に共感を覚える。宮坂さんは土着の言葉にこそ顔=貌(かお)があると言う。読書人の雑誌・岩波書店『図書』2月号「母なる地貌」でも、地貌の言葉に「縄文以来の季節の原始性が蘇(よみがえ)るようだ」と説く▼そこにしかない人間の暮らし。それを捉えた言葉に、耳を澄ませば風音や水音が聞こえてくる。地場の大気の流れと共に生きる。まさに命を宿す色あせない“言の葉”が生い茂る。風土という言葉はかっこ良過ぎないかとも思う。この二文字では言い表せない▼個別の土地の抱える哀感が、肉声とならず伝わりにくい。宮坂さんが地貌季語に挙げる〈木の根開(あ)く〉。北国の大木の周りの雪解けの情景が浮かぶ。沖縄の3月末から「穀雨」にかけての温和な季節を表す〈うりずん〉も一つ。73年前の同時期、沖縄を襲った米軍による爆弾の雨とも重なる。この時期の〈うりずんの雨〉は〈血の雨〉を思い出させる▼きょうは二十四節気の「処暑(しょしょ)」である。今年は、暑さへの特別の思いが募る。それぞれの地域で地貌季語を生かした一句でもいかがか。

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