広い範囲で暴風雨 “弾丸台風”縦断

強風でビニールが吹き飛んだナスのハウスを補修する農業関係者(4日、高知県芸西村で)

台風21号による強風で倒壊した小屋(4日、和歌山市で)

 台風21号は4日、非常に強い勢力を保ったまま徳島県南部、神戸市付近に上陸後、速度を増して列島を縦断し、日本海沿岸を北上した。5日朝にはロシア・沿海州付近で温帯低気圧に変わる見通しだ。四国、近畿、東海地方の広い範囲で、急激な強い風により園芸ハウスのビニールが剥がれるなどの被害が発生。近畿地方の農家らは「一気に雨脚が強まり、横殴りの雨になった」と話し、不安な一日を過ごした。台風が過ぎ去った5日昼以降は東日本を中心に気温が急上昇する見通しで、気象庁は熱中症や農作物の高温障害に警戒を呼び掛ける。
 

ハウス飛び 果樹折れ


 台風21号は4日、高知県内に強い風雨をもたらした。室戸市や芸西村でナスのハウスの被覆フィルムや天窓などに被害が出た他、果樹への被害も心配されている。被害状況の詳細は、県などが調査している。

 午前11時53分に室戸岬で最大瞬間風速55・3メートルを記録した室戸市羽根町でナスを栽培する松下勉さん(54)は「前回の台風20号より風が強かった。周辺農家の被害を心配している」と話した。JA土佐あきによると、同市の約10戸の露地オクラの圃場(ほじょう)で倒伏被害を確認した。

 香川県でも農業被害が相次いだ。丸亀市でキュウリやナスを栽培する大林将都士さん(27)の圃場では、横風でパイプハウスが倒伏した他、キュウリやナスの擦れ果などがあった。大林さんは「出荷まであと少しだったので、つらい」と話す。

 東かがわ市でサトウキビを栽培する清川秋雄さん(71)は「全面倒伏した。収量は3割減になる見込み」と肩を落とす。三木町などでは、短期栽培の水稲「コシヒカリ」が倒伏した。多度津町でオリーブを栽培する(株)蒼のダイヤの細川勝社長は「前回は枝が折れた。枝が傷んでおり、後の被害が心配」と話す。

 JA香川県の吉本康常務は「短期作のコシヒカリの倒伏や、出穂した『おいでまい』は不稔が心配」と、被害状況の把握を急いでいる。

 JAアグリあなんは、チンゲンサイやサンチュ、キュウリなどのハウスでフィルムの剥がれなどを約60戸で確認。ハウスの骨組みが曲がり、基礎からパイプが抜けて隣のハウスにかぶさるなど大きな被害も出ている。JAは「風が強く、被害が大きくなりそうだ」とみる。

 強風に見舞われた和歌山市では電柱が倒れ、道路ではトラックが横転、信号が停止し、至る所で通行止めとなった。影響は収穫間近の水田にも及び、破損した看板や住宅のトタンなどが入り込んだ他、稲の倒伏や冠水、小屋の倒壊なども見られた。和歌山県は、5日から台風被害の状況把握を本格化させる予定だ。

 奈良県では、五條市や大淀町などで収穫を間近に控えた柿や梨の枝折れ、落果が相次いだ。県によると今週、来週にかけて柿「中谷早生」、「刀根早生」の初出荷を控えているという。

 三重県では、松阪市西部などで大豆に冠水被害が確認された。JA松阪は「大豆の根にダメージがあれば、11、12月の収穫に影響が出てくる」とみて、被害状況を調査している。
 

真夏日再び到来 気象庁


 気象庁によると、台風21号は各地で統計史上の記録となる猛烈な風を観測した。和歌山市では観測史上1位となる最大瞬間風速57・4メートルを記録。岐阜県白川村、三重県亀山市や奈良県十津川村などで統計史上最大となる瞬間風速を記録した。

 雨も強く、香川県東かがわ市では1時間に90ミリを超す猛烈な降雨で、記録的短時間大雨情報を発表した。

 台風は5日午前中には北海道を抜ける見通しだ。台風が過ぎ去った後は、暑さがぶり返す見通し。同庁は4日、東・西日本を中心に7日ごろまで30度を超える気温が続くとして、熱中症への注意を呼び掛けた。

 同庁によると、9月も太平洋高気圧の日本付近への張り出しが強いために、南風が入り気温が上がりやすくなる。「平年より気温が高く、厳しい残暑となる。農家は農作業中の熱中症に気を付けてほしい」(地球環境・海洋部)と呼び掛ける。

 一方、8日から14日までは、気圧の谷や前線の湿った空気の影響で全国的に曇りや雨の日が多くなる。北海道では特に降水量が多く日照時間の少ない状態になる。同庁は、気温の変動による農作物の管理に注意を促している。

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