“弾丸台風” 各地に爪痕 出来秋なぎ倒す リンゴ、柿、トウモロコシ…

根から折れたリンゴの木を前に肩を落とす熊谷さん(5日、青森県弘前市で)

変わり果てた園地を見てぼうぜんと立ち尽くす中西さん(5日、和歌山県九度山町で)

 強い台風21号は5日、出来秋の日本列島に大きな爪痕を残し、同日午前、温帯低気圧に変わった。東北、北海道では、果樹の落果や飼料作物の倒伏といった被害が発生。リンゴの落果被害に遭った生産者は、多発する黒星病とのダブルパンチに困惑した表情を見せた。一方、接近、上陸から一夜明けた四国や近畿、東海の各地では、強い風雨による農業被害の詳細が明らかになってきた。
 

平地で猛威 根こそぎも 青森


 青森県弘前市では、リンゴの落果や倒木の被害が相次いだ。同市と市内3JAの職員は台風が通過した5日朝から市内19エリアを調査。JAつがる弘前によると、平地の畑でリンゴの落果や倒木が目立ち、多い所では約1割が落果した。

 同市のリンゴ農家、熊谷健一さん(51)の園地では計3本が倒木した。1本は老木で、残りは比較的若い木。周囲は田んぼで遮るものがなく、地面の緩い畑だったために根こそぎ倒木した。

 収穫を早めるなど抜本的対策も取れなかったという。熊谷さんは「黒星病の流行もあり、収穫量が少なくなるかもしれない。市場価格次第では収入が減る恐れもある」と肩を落とす。
 

収穫間近に 大きな痛手 北海道


 北海道では、全道各地で強風による農作物の倒伏やハウスのビニールが剥がれるなどの被害が発生した。北海道倶知安町が管内のJAようていでは、ソバやトウモロコシなどの倒伏が続出。減収は免れず、収穫を間近に控えていたこともあり、農家からは落胆の声が相次いだ。

 同町に隣接する京極町で経産牛60頭を飼う堅田昌克さん(28)は「就農して10年たつが、こんなに倒れたのは初めてだ」と驚きを隠せない。今月下旬に、収穫予定の飼料用トウモロコシが根こそぎなぎ倒された。被害は、畑4ヘクタールのうち約1ヘクタール。堅田さんは「実にかびが発生したら収穫は諦めるしかない。種子や肥料など経費がかかっている分、痛手だ」と肩を落とす。

 この他、JA新はこだて管内やJAいわみざわ管内でも被害が報告されている。
 

停電広範囲 CE動かず 東海


 東海地方でも、広い範囲で停電した影響で、一部の地域で5日もカントリーエレベーター(CE)などの施設が稼働できない状況が続いた。広い範囲で農業ハウスの倒壊や農作物への被害、JA施設の損壊などが確認された。一部地域では停電の影響で畜舎の空調が止まり、豚が窒息死した。
 

施設が損壊 擦れ被害も 四国


 JAアグリあなん管内では、5日午前11時までに、施設園芸用ハウスのビニール・ポリが破損する被害が45件、ハウスの一部倒壊が26件、全壊が5件の発生を確認した。露地野菜や、ハウス内で栽培する野菜にも強風による擦れなどもあった。

 前回の台風20号より風による被害が大きく、生産物の被害額は2000万円を超える恐れがある。

 香川県は5日、午後1時現在の農業関係の被害をまとめた。被害総額は1184万円。品目別では、短期水稲で倒伏が100ヘクタール、被害額は265万円。野菜はネギの倒伏や果菜類の擦れ果などが4・6ヘクタール、212万円。果樹はキウイフルーツや梨の落果、オリーブの倒伏など3・8ヘクタール、211万円など。

 園芸関係施設で447万円。畜産関係でも16万円の被害を確認した。

 高知県は5日午前11時現在、水稲や野菜、果樹、花き、ハウス施設、被覆フィルムなどの被害を県東部を中心に12市町村で確認している。県は県園芸用ハウス整備事業の活用などで、ハウスの早期復旧を目指す。
 

ハウス飛来 果樹を直撃 和歌山


 「これからどないしていこうか」。和歌山県九度山町の柿農家、中西雅也さん(45)は、変わり果てた園地をぼうぜんと見つめた。

 同県は日本一の生産量を誇る柿の産地。出荷を間近に控えていた中西さんの園地では近隣のビニールハウスが果樹を直撃。その影響で柿が落果し、枝が折れ、防霜ファンが支柱ごと倒れた。また柿の擦れが目立っており、品質低下を招きかねない事態に陥っている。

 中西さんは「擦れた跡は黒くなると、出荷できない。少なくとも出荷量は昨年に比べ1割は減る」とみる。同町では台風で柿の被害が相次いでおり、「日本屈指の柿産地を維持するためにも、行政による支援が必要だ」と語気を強めた。

 和歌山県によると、柿以外に桃やミカンなどでも被害が出ているという。
 

風速、雨量、潮位… 各地で最高値更新


 日本海北部で温帯低気圧に変わった台風21号は、近畿地方を中心に猛威をふるい、各地で風速や雨量などが過去最高値を超えた。

 最大瞬間風速は大阪府田尻町で58・1メートル、和歌山市で57・4メートル、青森県弘前市で22・2メートルを観測するなど、全国78地点で最大瞬間風速が観測史上最高を記録した。台風は暴風域に豪雨をもたらし、愛知県豊根村では24時間降水量が323・5ミリを観測。11年ぶりに同地域の過去最大値を更新した。

 また、台風の上陸に伴い海上がしけとなって、近畿地方の沿岸部を中心に各地で高潮が発生。全国6地点で、瞬間的にこれまでの最高潮位を上回った。

 気象庁によると、大阪市では、1961年の第2室戸台風で起きた過去最高潮位293センチを上回る329センチを観測。これまでの最高記録が2014年の台風11号での163センチだった和歌山県御坊市では316センチを記録した。 

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