自民党総裁選告示 農業農村の将来像示せ

 自民党総裁選が7日、告示される。経済政策アベノミクスの実績を誇示する安倍晋三総裁(首相)に対し、地方が置き去りになっているとして政策の軌道修正を主張する石破茂元幹事長が挑む構図で、ともに地方票争奪に向け地方重視を掲げる。政策決定の手法を含めて食料・農業・農村の将来像をどう描くのか、明確に示すべきだ。

 安倍氏は8月26日に鹿児島市で立候補を表明し、「5年半で経済は11・8%成長し、昨年は過去最高を記録した。雇用では正社員が78万人増えた」と語り、アベノミクスの成果を強調した。「数値で見る安倍政権の6年」と題した政策ビラでは「40代以下の新規就農者数 4年連続で2万人突破 統計開始以来史上初」「生産農業所得 18年ぶりの高水準」「農林水産物輸出 2017年 8071億円 5年連続で過去最高を更新」などと記した。アベノミクスの恩恵が地方に十分届いていないという批判を意識したものとみられ、地方行脚を本格化させている。

 これに対して、石破氏は同27日の記者会見でアベノミクスの検証資料を公表し、看板政策の「成長戦略」「地方創生」などは目標未達の「失敗」と断じた。石破氏は地方創生や社会保障改革で消費を喚起する「石破ビジョン」を打ち出して、対決姿勢を鮮明にする。アベノミクスの軌道修正を対立軸に据えて火花を散らす格好だ。「石破ビジョン」では、「全国民ひいては全世界が利益を享受するもうかる農林水産業の実現」や「農林水産業を通じた地域の維持・活性化」などを掲げ、基幹産業である農林水産業をてこ入れし、地方重視をアピールする。

 とはいえ、農政についての論戦は深まっていない。農協改革をはじめとする一連の農政改革

をどう総括し、日米の新たな貿易協議(FFR)などにどう対処するのか、具体的な議論にはなっていない。

 西日本豪雨や台風21号、6日未明に北海道で発生した地震など大災害への対応策も待ったなしだ。安倍氏は国土強靱(きょうじん)化、石破氏は「防災省」の創設を盛り込んだが、国民の命と財産を守る危機管理を国の最優先事項として議論する必要がある。

 街頭演説会は全国5カ所で行う。12年の総裁選の17カ所から大幅に減り、討論会や共同記者会見も前回の5回から4回になる見込みだ。自民党は北海道での地震を受け、演説会などは7~9日の活動を自粛することを申し合わせた。

 総裁選は、自民党の国会議員と党員・党友による投票で行われるが、最高権力者を決める選択であり、農業者らの関心も高い。官邸主導の政策決定の在り方や農政改革などを総括し、検証する論戦を展開することは責務ともいえる。20日の投開票まで真摯(しんし)な論戦を期待する。国民の意識と乖離(かいり)した論争は許されない。

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