若者の田園回帰 試される地域の包容力

 若者が農村を目指す田園回帰の動きが続いている。この好機をいかに捉えるか。地域とJAの包容力が試されている。政府の支援も重要になっている。

 49歳以下の新規就農者が2017年で2万760人となり、4年連続で2万人を超えた。14年に2万1860人となって以降、2万人台を保つ。注目は、農家の子弟ではなく、農地などを確保して経営を始める「農外就農」。49歳以下は17年で前年比10%増の2710人と、07年の調査開始以降で最多を更新した。

 農業にゆかりのない若者がなぜ、農業、農村を目指すのか。いくつかの要因が考えられる。リーマン・ショックなどの経済不況を受け、大企業偏重の働き方を見直す動きが生まれている。加えて7年半前の東日本大震災の発生で、家族の在り方などライフスタイルの変化も進んだ。

 インターネットの交流サイト(SNS)などが普及し、どこにいても交流でき、買い物もできるといった利便性が向上した点も大きい。農村に住むことに不便さを感じない若者が増え、自然環境に引かれて、率先して村を目指している。政府の青年就農給付金など担い手対策の後押しも効果を発揮している。

 この流れは農村部にとって、大きなチャンスである。高齢化や人口減に歯止めがかからない地域を活性化するには、外部からの若手人材の活用は不可欠だ。

 JAの挑戦も始まっている。山梨県中央市のJA中巨摩東部では、農業で生計を立てるという夢を持った地域おこし協力隊を全面的に支援する。仕組みはこうだ。市が協力隊を募集し、JAは、耕作放棄地を整備した研修圃場(ほじょう)で、営農指導員が農業を教える。

 新規就農者支援はこれまで農家の子弟が中心だったという。定住するかどうか分からない協力隊を支援するJAは全国的に少ないが、同JAは「人も技術もJAにはそろっている。市と共に若い協力隊を育て、地域の農業を守っていきたい」と強調する。JAの持っている力を将来の人材育成に発揮する、その必要性は高まっている。地域と就農者の橋渡しなど、JAだからできる取り組みは多い。

 政府は、農業生産を続けるために必要な農業就業者数を約90万人と推計。これを60代以下で安定的に担うためには、49歳以下の農業従事者を23年度までに40万人にする目標を掲げる。

 現実はどうか。17年度の49歳以下の農業従事者数は前年比8000人増の32万6000人。目標を達成するには新規就農者をさらに増やす必要があり、政府の支援は欠かせない。

 意欲ある若者ほど、既存の考え方にとらわれない柔軟でユニークな発想を持っている。時には周囲とのあつれきを生むかもしれない。それでも“出るくいは打たず”そっと支えよう。JAをはじめ、受け入れ側もまた試されている。

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは