谷本歩実さん(柔道家) 食の大切さ指導の柱に 強靭な体づくりサポート

谷本歩実さん

 の子ども時代は、スポーツをやるのは体の強い子、大きい子でした。それなのに私はアレルギーとぜんそくがあって、すごく体の弱い子。母は私のために、家族とは別の食事を作ってくれていました。

 そんな私でも柔道を始めてみたら、面白くて。中学に入った頃にはアレルギーも良くなり、いろんなものを食べられるようになったんですけど、今度は階級制のための減量に苦しむことになりました。

 成長期のただ中。すぐに体が大きくなります。市大会、県大会……と勝ち上がっていけば、どんどん出場する大会が続きますよね。全て同じ階級でないといけないから、何カ月か前に出たのと同じ体重で出場します。10キロも落とさないといけない状態になったので、母は炭水化物抜きの料理を作ってくれるなど、減量に協力をしてくれました。

 高校に入ってからは、階級を二つ上げました。思いっきり食べると、体が強靭(きょうじん)になりますね。練習しても息が上がらない、バテない。試合の結果も良くなっていきました。

 日本代表として戦うようになってからは、試合当日の食事に気を使うようになりました。朝ご飯は“ガソリン”。きっちり食べないといけないんですけど、緊張して食べたくても食べられないことがあります。交感神経が高まっているからですね。それを抑えるため副交感神経の働きを良くするように、自身でスイッチを入れるんです。日頃から朝ご飯を食べる練習、眠る練習をして備えていました。

 リンピックなどの大会では、1日5試合行います。最初に3試合やって、2時間ほど休憩があって準決勝。そして決勝となるのが普通ですけど、休憩なしですぐに準決勝が始まることもありますし、負けたら敗者復活戦に回ります。

 その時その時の試合時間を考えて、食事を取ります。おにぎり1個を食べると何時間で力になるというように分析し、試合まで逆算して、どの時間にどんな内容のものを食べるか考えるんです。また試合直前の計量前には、あと100グラム食べられる。それはおにぎりにするか、飲み物にするか。どちらが試合の時点で力になるのか、と。

 食べ慣れない食事では、力が出せません。オリンピックの選手村とは別の所で、栄養士さんが日本食を作ってくれました。ご飯と赤だし。私は愛知県出身ですから八丁みそです(笑)。おにぎりも握ってもらいます。梅干し、現地で調達して焼いたサケ、昆布などが入っていました。そのおにぎりには、皆さんの魂が込められてましたね。階級別に連日試合が続き、栄養士さんの睡眠時間は毎日2、3時間。最終日にやっと試合会場で観戦するという感じでした。

 テネで金を取った時は「勝たせてもらいました」と思いましたし、北京の時には「また勝たせてもらいました」と思いました。それだけのサポートをしていただいたんです。

 引退して指導者になろうと思い、服部栄養専門学校に通い栄養士の資格を取りました。さらに弘前大大学院でスポーツ医学を学び、こちらは10年かけて昨年ようやく修了しました。

 選手がきちんと現役を全うするように、サポートをしたいんです。現役時代、つらいことはたくさんあります。壁を乗り越えられなくて悩みますし、けがをして苦しむこともあります。それでも、最後までやり続けてほしいと思うんです。選手が肩の力を抜いて悩みを打ち明けられるような、母親のような存在が理想ですね。そのために、食の話題っていいんですよ。それで和んでいろいろと話が弾んでいきますから。(聞き手・写真 菊地武顕)
 

 

<プロフィル> たにもと・あゆみ


 1981年、愛知県生まれ。9歳のときから柔道を始めた。2004年のアテネ五輪、08年の北京五輪の女子63キロ級で優勝。2大会連続で全試合一本勝ちは、前代未聞の快挙。現在はコマツ女子柔道部助監督を務める。

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