リーマン危機10年 地域密着型金融で活路

 リーマン・ショックから15日で10年を迎える。「100年に1度」の金融危機とされた。一方でリーマン危機は協同組合銀行の有効性も示した。先行き不透明な今こそ、協同組合の特色である地域密着と相互扶助を基軸に事業展開を強める時だ。

 リーマン危機が、結果的にトランプ米大統領を生み、経済・軍事両面の中国の膨張主義を誘い、歯止めが効かなくなった米中貿易紛争を招いた。2008年9月15日の米証券大手・リーマン・ブラザーズの経営破綻は、歴史の大きな転換だったといえよう。

 幾多の重大危機に直面した世界経済は、先進国を中心とした国際的な金融協調で難局を打開してきた。特に、深刻だったのが米国発の経済危機だ。米国を軸に日欧が結束してきたG7(先進7カ国)だけでは対処不能に陥った。

 危機の後、世界はこれまでとは全く異なる新局面に入ったと言っていい。08年11月、米ワシントンで中国など新興国も加わるG20(主要20カ国・地域)の首脳による金融サミットの開催だ。それ以降、中国の影響力が国際的に強まり現在に至る。国内総生産(GDP)で中国が日本を抜き世界2位となるのはその2年後、10年。中国はリーマン危機直後に4兆元(当時レートで57兆円)もの巨額の景気刺激策を打ち出し、世界経済の底割れをふさいだ。大国化した中国の経済力は米国に迫り現在、両国の貿易紛争が激化している。一方で迅速で手厚い米国の大銀行救済策は、取り残された人々の不満と政治不信を膨らませ、やがてトランプ大統領の誕生につながる。

 10年前の日本はバブル崩壊の傷が癒えたばかり。海外市場の急速な冷え込みは、輸出主導型の日本経済に大打撃を与えた。特にリーマン危機以降、対ドル為替相場が120円前後から一気に80円台と円高になり輸出が急減した。金融では国際取引を担う農林中金の経営が急速に悪化。大幅な赤字決算に陥り、翌09年には会員JAなどから1兆9000億円に上る大規模な増資を受けた。やがて金融市場の回復もあり、一時約2兆円のマイナスとなった有価証券の評価損益はプラスに転じ、危機を脱した。

 その後農中は、存在意義を見つめ直し、農林水産業のリーディング金融機関として「原点回帰」の自己改革にまい進。JA全農との連携を強め、食農ビジネス支援などJA自己改革への強力な後押しを実践中だ。

 リーマン危機の中でも世界的に見れば欧州を中心に協同組合金融は健全性を保った。地域に根差した協同組合の強さが、12年の国連による国際協同組合年の制定につながる。

 今、途上国の通貨危機や貿易紛争激化の中で、世界同時不況の足音も高まってきた。リーマン危機から10年の教訓は、協同組合の原点を見つめ直すことから始まる。

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