停電、乳房炎…涙の選択 生乳行き場なく 酪農に大打撃 影響長期化も チーズ店署名活動■東京から支援の輪 北海道

乳房炎を発症した牛の生乳を廃棄する横田さん。ふん尿などと同じ溝に流し一緒に処理している(13日、北海道別海町で=富永健太郎写す)

 最大震度7の地震で全域に一時停電状態になったことで、大量の生乳廃棄が発生し、北海道内の酪農家が打撃を受けている。道内は経営体当たりの搾乳頭数が年々増加し大規模化しているだけに、損失は膨大。停電が復旧した後も、乳房炎が発症した牛の生乳廃棄が続いている。今後乳房炎の牛が増える恐れもあり、影響は長期化しそうだ。廃棄した生乳を補償する仕組みがない中、支援を求める声が広がり署名運動も始まっている。

 別海町で搾乳牛88頭を飼う横田和之さん(39)は、6日の停電から10日の出荷再開まで、合計10トンの生乳廃棄を余儀なくされた。生乳は貯蔵していたバルクから、ふん尿をためるタンクにつながる排水口に吸い込まれていった。「今までの苦労が流れた。やるせない」。言葉にならない虚しさが残った。

 さらに、乳房炎にかかった牛は13日で2頭増え、5頭となった。生乳は現在もバケットミルカーで搾り、日量120キロを廃棄している。牛が回復しても元の乳量に戻る保証はない。停電がなければ、牛乳や乳製品に変わり、消費してもらえるはずだった。牛のダメージは大きく、出荷乳量は震災以前より3割減少。横田さんは「大損害だ」と厳しい口調だ。

 酪農専業地帯の根室地方では、日量2100トン以上が生産されることから6、7の2日分で4200トンは廃棄されたとみられる。8日以降も工場で受け入れできないケースや、乳房炎の治療に伴う廃棄などがあったためさらに増える見込みだ。

 標津町のTMR(混合飼料)センター、酪援・緑では参加農家6戸、約600頭の生乳が少なくとも2日分廃棄され、計約44トンに上った。生乳1キロ100円とした場合、生乳だけでおよそ440万円の損失。餌代など生産に関わる経費がかかっているため、被害額はさらに増える。

 北海道地震により被害を受けた酪農家の支援を求める署名運動も始まっている。東京都内のチーズ専門店「チーズのこえ」の代表を務める今野徹さん(42)が10日からフェイスブック上で呼びかけており、国に対して廃棄した生乳の全額補償や、長期的な支援を求めている。集めた署名は、農相に提出する計画だ。

 今野さんは地震後に、取引している酪農家を回って現状を把握。停電により、生乳を廃棄する現場などを目の当たりにした。「ゆくゆくは乳製品が品薄になるなど、自分たちの食卓に影響が及ぶ。北海道へエールを送りたい」と意気込む。13日時点で1300人以上の賛同を得ている。(川崎勇)
 

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