台風21号で未曽有のハウス被害 どう再建 農家に不安 資金も業者も資材も不足 近畿地方

猛烈な風で倒壊したハウスを心配そうに見つめる山本さん(大阪府岸和田市で)

 台風21号の直撃を受けた近畿地方で、農業用ハウスの被害が深刻だ。大阪府では施設全体の3割に上る145ヘクタール、和歌山県では70ヘクタールが被害を受けたが、被害件数は調査中。件数の判明したその他の府県では、少なくとも5000件を超す被害報告が上がる。ハウス再建の負担は生産者にのしかかる。全国的に自然災害が相次いでいることから、施工業者や資材の不足への懸念も広がっている。(斯波希、藤田一樹)

 「泉州水なす」産地の大阪府岸和田市。ハウス6棟(20アール)で水ナスやシュンギクを作る山本剛史さん(42)が力なく言う。「これからどうすればいいのか」

 6棟のハウスが、ほぼ全壊した。近くの関西国際空港(田尻町)では観測史上1位の最大瞬間風速58・1メートルを記録。猛烈な風雨が、約1700万円かけて4年前に建てた山本さんの生産拠点を破壊した。「筋交いを入れたり、柱に鉄骨を使ったりして補強していたのに」。収穫中だった水ナスはハウスの下敷きになった。「自力で解体しようにも、パイプが折れ曲がりどこから手を付けていいか分からない。早く復旧の見通しをつけたいが……」と困惑する。

 地元のJAいずみのによると、被害は同市や和泉市など管内全域に広がる。パイプハウスの9割が損壊した。JAは、廃ビニールや廃プラスチックの置き場を営農総合センターの敷地に設置。22~24日には、ハウスの解体作業などを行う職員有志のボランティアを被災農家に派遣する。営農経済部の信貴正憲部長は「農家の気が少しでも休まるよう、復旧を手助けしたい」と話す。

 台風21号は、近畿全域を暴風域に巻き込んだ。滋賀県ではハウスの全・半壊が818件、一部破損を含めると2942件(10日現在)に上る。京都府で1489棟(7日現在)、兵庫県で440棟(6日現在)、奈良県で641カ所(12日現在)とかつてない被害状況だが、全容はまだ明らかになっていない。

 約2000棟のハウス群が広がる滋賀県草津市の北山田野菜生産団地。約1000棟のハウスが被災した。その半数近くで、ホウレンソウや青ネギなどの出荷を断念した。農家は残ったハウスでの収穫や種まき準備と並行して、被災したハウスの片付けに追われる。

 同市の中島春樹さん(65)はハウス17棟中12棟が被災し、そのうち4棟が全・半壊した。再建には1棟当たり150万円ほどかかるという。「目に見える被害だけでなく、栽培できない期間の収入減の影響も大きい」。JA草津市は「再建は資金面での負担が大きい。JAでも何らかの支援をしたいと考えているが、国や行政の助けも必要だ」(農産部)と訴える。

 懸念されるのが資材や施工業者の不足だ。同JA農産部の奥野裕和部長は「50年に1度あるかないかの災害。近畿一円で被害が出ており、資材や業者を確保するのに時間がかかりそうだ」と心配する。

 大阪北部地震や西日本豪雨、相次ぐ台風などの影響で施工業者に注文が集中。滋賀県の業者は「ハウスの施工業者自体が減っている。問い合わせが多く、手が回らない状況」と話す。

 JAいずみのでは、大阪と奈良の施工業者にハウスの施工や解体を依頼している。だが、資材や職人の不足で管内のハウス再建は早くても12月ごろになる厳しい見通しだ。「資材の状況によっては、ハウスの再建が1年先の農家も出る」(営農経済部)とみる。

おすすめ記事

地域の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは