「すぐ死ぬんだから」

 「すぐ死ぬんだから」。作家内館牧子さんの同名の著書によると、このセリフは高齢者にとって免罪符らしい。「外見を放りっぱなしという生き方は、自分で自分を放棄することである」と。きょうは「敬老の日」。年を重ねてこそ人生も肌も張りを持ちたい▼夫に先立たれ、老け込んだ77歳の母を元気付けようと先日、都内の写真スタジオに誘った。生前に遺影を撮影すれば長生きできると聞き、プロに頼むことにした。母、人生初のつけまつ毛。白いファンデーションを塗って眉毛を整え、紅を引く。まさかのネイルも。背筋を伸ばし胸を張りカメラ目線で満面の笑み。口を開かなければどこぞのマダムか。化粧一つでここまで変わるとは▼日本臨床化粧療法士協会代表の河村しおりさんによると高齢者の化粧は気持ちが明るくなり、脳への良い刺激となり、認知症の改善や健康寿命の延長につながるという。化粧の後は介護施設の若い男性をデートに誘う余裕も生まれるとか▼「どうせ死ぬからは気持ちの手遅れ。でも肌は生きている限り手遅れはない」と河村さん。リハビリの一環でリズムに合わせた化粧体操も考案した▼スタジオからの帰り道、母がつぶやいた。「どうしよう。あと20年生きちゃったら」。はいはい、その時は宝塚風に撮り直しましょうね。 
 

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