復興・再生のヒント 先進地の事例活用を 民俗研究家 結城登美雄

結城登美雄氏

 過疎化、高齢化、介護。農林漁業の衰退。シャッター通り商店街など多くの課題を抱えている日本の地域社会。そこに追い打ちをかけるように襲った東日本大震災、熊本・北海道地震、豪雨・豪雪・巨大台風などのすさまじい自然災害。思わず、どうなってしまうのか日本の地域社会の未来は! と暗たんたる思いに陥ってしまう。

 だが、しからばどうすればよいのかと問われれば、私を含めて 多くの人々はこの現状を立て直す 再生の道を示せないまま、せいぜい行政や有識者に頑張ってもらいたい、などと低い声で つぶやくしかできないでいるのではあるまいか。

 地域とは何か。私はそれを「家族が集まって暮らす生活の場、人生の場」であるととらえたい。すなわち地域とはさまざまな思いや考え方、そして多様な生き方と喜怒哀楽を抱える人々の集まりである。そして誰もが心のどこかで、わが暮らし、わが地域をよくしたいと思っている。

 だが、その思いや考えを出し合い確かめる場がほとんど失われているのも地域の現実である。今求められているのは、自分たちの地域をよくするために、地域の人々が気軽に集まり話し合うための場づくりなのではないか。
 

現場取材を蓄積


 その場づくりのヒントになるのが、NHKが3年前から推進している「NHK地域づくりアーカイブス」の活用なのではないか。NHKはこれまで国内各地の地域づくりの現場を数多く取材し番組化してきた。そしてこれらの事例を「農林水産・食」「環境・エネルギー」「コミュニティ・商店街」といった八つのジャンルに分けてアーカイブス化した。

 このアーカイブスは東日本大震災の復興支援番組づくりから生まれた。震災後、被災地では高齢化や人口減少、孤独死、農林漁業の衰退などさまざまな課題が表面化した。そこで、そうした課題を乗りこえてきた「先進地」の地域づくりの取り組みを紹介しながら、住民とともに地域の未来について話し合う「明日へ、復興サポート」という番組を始めたが、やがて、こうした取り組みは被災地だけでなく、同じような課題を抱えた全国の地域にも参考になることに気づき「地域づくりアーカイブス」は本格化した。
 

無料で視聴可能


 現在収録された動画数は500件ほど。数々の番組からエッセンスを選び、10分前後に再編して配信している。パソコンでもスマホでも無料で視聴できるという。

 改めて言う。地域をよくする主体は住民である。月に1~2度、気軽に茶を飲みながらこれらの動画をテーマごとに見ながら感想や意見を述べる場をつくれないか。私も大学院の授業でこの動画をみせると、若者・学生たちが地域に強い関心を持ちはじめるという経験をした。多くの人々に活用してほしい。

<プロフィル> ゆうき・とみお
 
 1945年山形県生まれ。山形大学卒業後、広告デザイン業界に入る。東北の農山村を訪ね歩いて、住民が主体になった地域づくり手法「地元学」を提唱。2004年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞。 

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