原木高騰 シイタケ苦境 地元産使えず 価格2.5倍超 賠償頼み いつまで 本来は赤字、存続の危機 再開2年目岩手の産地

「地元産の原木が使えず、賠償がなければ離農せざるを得ない」と訴える、シイタケ農家の佐々木さん(岩手県一関市で)

 東京電力福島第1原子力発電所事故による原木露地シイタケの出荷制限を解除された岩手県の産地が、原木価格の高騰にあえいでいる。放射性物質検査で1キロ当たり50ベクレル以下の原木を使用するなどの管理を継続しなければならず、基準を満たす原木を地元で手に入れることは難しい。地域外から調達せざるを得ない状況だが、供給不足により事故前の2・5倍超と高騰。東電からの賠償なしには営農継続できない現状だ。生産者は、将来への不安を抱えたまま制限解除後2年目の秋子の収穫を迎える。(海老澤拓典)

 かつて同県を代表する産地だった一関市の山間部、興田地区のほだ場。原発事故前は地元産で賄っていた原木は、全て地区外産に置き換わった。

 シイタケを手掛けるのは、JAいわて平泉椎茸(しいたけ)部会長の佐々木久助さん(64)。原発事故前には年間5000本植菌していた。出荷制限解除のためのルールを県が定めたことを受け、2015年春から2000本に植菌し、生産を再開した。17年春に出荷を始め、今年はほだ木3000本を手掛ける。

 だが、事故前の生産環境には程遠い。制限解除後も、ほだ木を地面に接触させないなど放射性物質を避ける管理を徹底しなければならず、手間が増えた。最も打撃が大きいのは、原木を地元で賄えないこと。使えるようになる時期は不透明のままだ。

 そのため原木は、県森林組合連合会を通じて県北部や秋田県から調達している。そんな中、原木の価格高騰に直面した。18年度は1本当たり400円と、原発事故前の同150円と比べて2・5倍以上となった。

 種菌代などを踏まえると、ほだ木1本当たりにかかる経費は約500円。干しシイタケの価格は事故前の8割の水準で、17年度からの販売収入だけでは生産コストを賄えず、東電からの損害賠償で赤字を何とか回避している状況だ。

 佐々木さんは「地元の原木が使えるようにならないと、どうしようもない。賠償ありきの営農再開。賠償がなければ、離農せざるを得ない」と、苦しい胸の内を明かす。

 JAいわて平泉管内では、原発事故の影響で離農者が続出。現在の生産者数は佐々木さんを含めて15人。事故前と比べ10分の1にまで縮小した。深刻なのは、後継者不足だ。毎年、1、2人いた新規就農者は原発事故後、一人もいない。

 JAは「賠償なしでは赤字となる現状では、賠償の対象にならない新規就農者の参入が考えにくい。このままでは、産地の存続が難しくなる」(園芸課)と打ち明ける。

 原木価格が下がる見通しは立っていない。原木調達を担う県森連は「出荷制限を受けた地域が原木の供給産地だっただけに、需要に供給が追い付かず、価格は上昇傾向だ」(業務部)と説明。原木を切り出す技術習得には時間がかかるため、「林業の担い手をきちんと育成しなければ、安定供給は難しい」と指摘する。
 

なお6県で出荷制限


 岩手県では、今なお出荷制限が13市町で続く。林野庁によると、同県の16年の原木生シイタケの生産量は、東日本大震災前の10年に比べ31%減の265トン、原木干しシイタケの生産量は同57%減の86トンにまで落ち込んだ。原木栽培の生産者も半数に。10年には1157戸いた生産者は、16年で588戸に激減している。

 今年9月現在、同県と宮城、福島、茨城、栃木、千葉の6県で出荷制限が続いており、各県で生産量、生産者ともに大きく減少している。 

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