いざというとき 防災協力農地 登録増も認知まだ

防災協力農地に登録された市街化区域内の農地(東京都武蔵村山市で)

 災害時に住民の避難場所や仮設住宅の建設用地、資材置き場となる防災協力農地に取り組む自治体が増えている。農水省によると、人口の多い三大都市圏特定市で防災協力農地などに取り組む市区は2016年3月末時点で7都府県61区市と10年で倍増した。一方で農家の自主的な農地登録が進まず、自治体自らが農地を探したり、防災協力農地に対する市民の認知が進まなかったりするなど、課題も見えてきた。(中村元則)
 

10年で取り組み倍 仕組み浸透が課題


 全国で災害が相次いだことを受けて昨年7月、JA東京みどりと「災害時における農地使用に関する協定」を結んだ東京都武蔵村山市。市は当初、農家向けに防災協力農地の説明会を開き、農家の自主的な登録を期待したが、「利用後の農地への不安からか、思うように登録が進まなかった」(産業振興課)と打ち明ける。

 避難場所という性格上「市内各地に登録農地が必要だった」(同課)ことから行政主導で地域バランスを考え、農家一戸一戸に登録を求めた。登録農地は今年3月時点で35カ所を確保した。

 山田和男さん(68)は市内7カ所にある計2・1ヘクタールの農地でキャベツやニンジン、サニーレタスなどを生産する。市から打診を受け、3カ所計1・1ヘクタール分を登録した。

 農産物の売り先は市内の直売所や学校給食が中心だ。「地元の住民は、うちの野菜の消費者。困っている時は助けたい」と話し、農作物を育てていても、災害時は農地を提供する考え。「防災協力農地を通じて、市民に地元でたくさんの野菜が作られていることや都市農地の重要性も知ってもらいたい」と話す。

 市は3月、向こう10年間の市の農業政策の指針となる農業振興計画を改正。防災協力農地を現在の35カ所から100カ所に増やす目標を掲げる。市は防災協力農地の表示看板を設置し、市民への周知を目指すが、「まだ周知は進んでいない」(同課)という。

 市は防災イベントや市報などで防災協力農地を紹介し、認知向上とともに登録農地の増加につなげたい考えだ。「全国で災害が相次いでいる。まだ市で防災協力農地の利用はないが、いざというときに備えたい」(同課)としている。

 市街地の農地が災害時の避難先として注目を集めたのは1995年の阪神・淡路大震災がきっかけ。翌96年には、全国に先駆けて横浜市が防災協力農地登録制度を創設した。その後、三大都市圏でJAグループと連携して防災協力農地に取り組む自治体が増えた。

 大阪府貝塚市は防災の観点から行政主導で登録農地を増やしている。今年3月末時点で登録農地の総面積は約18ヘクタール。主に住宅が密集する地域にある農地を中心に登録を増やした。市農林課は「実際に防災協力農地で避難訓練をして、農家や市民に防災時の農地の重要性を伝える」と強調する。

 登録農地は実際に災害時に活用した場合は、収穫できない分を自治体が補償し原状回復する。「使用後の農地がどう復旧できるのか心配で、農地登録が進まない部分もあると思う。今後も原状回復や補償のことも丁寧に説明したい」(同課)と話す。
 

大阪府立大学大学院の加我宏之教授の話


 災害時に、農地が持つ防災的な価値は高い。その上で、まずは防災協力農地の認知度を高める必要性がある。自治体も地域防災計画に防災協力農地を盛り込むなどして、いざというときの避難先として市民に知ってもらうのもいいのではないか。 
 

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