農地、家、心に──癒えぬ傷 実りの秋… 笑顔消えた 助け合い収穫作業 北海道厚真町

田の一部が土砂崩れで被災しながらも米を収穫する伊部さん(北海道厚真町で=木村泰之写す)

吉野地区で刈り取った米を乾燥調製施設に運び込む小谷さん(右)(北海道厚真町で=木村泰之写す)

 田に流れ込んだ土砂、崩れた農業倉庫──。北海道地震から1カ月。最大震度7の揺れが襲った北海道厚真町には、今も震災の爪痕が生々しく残る。米の収穫期を迎え、営農や生活再建への見通しが立たない中、生産者は助け合い、農作業を分担し農機を融通し合いながら収穫作業を進める。収穫の喜びを分かち合うはずの「実りの秋」を、例年にない緊張と悲しみの中で迎えている。(望月悠希)

 同町宇隆地区の稲作農家・加賀谷俊昭さん(79)は、自宅前に通路として敷き詰めたれんがを外していた。住み慣れた家は地震の揺れでゆがんだ。「全壊」判定を受け、取り壊しが決まった。れんがは「小さな家を建て直したときに使えるかもしれない」と作業に励む。現在、親族の元に身を寄せる。今後は仮設住宅で暮らすつもりだ。

 営農は断念する。倉庫が崩れ、コンバインや乾燥機などが壊れた。年齢を考え新たに農機をそろえることは諦めた。

 手塩にかけて育ててきた約6ヘクタールの田は収穫を迎えた。農機は壊れ、使い慣れない農機を使うことが難しい加賀谷さんに代わり、同町幌内地区の米農家・森田知和さん(25)が収穫する。土砂崩れで自身の田は被災。今年は収穫ができない。加賀谷さんの孫の幼なじみで、困っていることを聞き、手伝いを申し出た。コンバインはJAとまこまい広域を通じ借りた。

 加賀谷さんの妻・弘子さん(75)は「これが最後の収穫。どうなることかと思っていた。本当に感謝している」と話すと、森田さんは「収穫がなくて暇だし、腕がなまってしまうから」と笑い掛けた。

 多くの人命が失われた同町吉野地区は、あるじのいない田が収穫を待ち、生産者らが助け合って作業を進めている。小谷一樹さん(31)は連日、収穫した米をトラックで乾燥調製施設に運ぶ手伝いをする。小谷さんも同町高丘地区で米15ヘクタールを栽培するが、土砂崩れで収穫ができない。「1カ月はいつの間にか過ぎてしまった。先が見えないが、少しずつ頑張っていくしかない」と話す。

 同町富里地区の伊部義之さん(50)は、親しくしていた生産者を土砂崩れで亡くした。「悲しいというより悔しい」と話す。米を約16ヘクタール栽培するが、50~60アールは土砂で埋まった。被害を免れた水田で収穫を進める。一角に設けた肥料を工夫し、育てた実験圃場(ほじょう)も順調に実る。「(亡くなった農家と)収穫できたら試食会をしようと話していた」と振り返る。

 伊部さんの住宅の周りは土砂が流入。2階の高さまで積もった。母と避難所生活も送った。倉庫などが被災し、農機が壊れ、被害は約2000万円に上る。田に用水を供給する水道管が壊れている可能性が高く、来年の作付けは見通せない。

 伊部さんは「農機の購入など課題は山積み。どうしようもない気持ちが大きいが、泣き言ばかり言っていられない。今、やれることは早く稲を刈って、地域を元気づけることだけ」と話す。 
 

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