高校生が教えてくれた 負けない心と行動力 医師・作家 鎌田實

鎌田實氏

 今年の夏の甲子園は、秋田県の金足農業高校の活躍に沸いた。農業高校にスポットライトが当たった。いいことだ。

 僕は歌手のさだまさしさんと「風に立つライオン基金」という公益財団法人をつくって、高校生のボランティア・アワードをしている。全国から84校が集まった。

 魅力的な地域活動をしている高校に鎌田賞を与えた。青森県の五所川原農林。高校生が認知症カフェを始めた。しかも、津軽特産の毛豆を栽培した。お年寄りは大喜び。若者の発想力はすごい。

 7月の西日本豪雨災害で率先してボランティア活動をした岡山県総社市の高校生たちも立派。避難指示が発令された7月7日の夕方、ある女子高校生が片岡聡一総社市長にメールを送った。
 

支援の輪を拡散


 「私たち高校生に何かできることはありませんか?」それを受け、片岡市長は「市役所へ手伝いに来てください」と返信した。高校生が情報を拡散した。翌朝500人を超す学生が集まった。

 泥のかき出しや家具の搬出、支援物資の仕分けと受け渡し、避難所の食事配布や清掃……。かいがいしく活動する高校生たちの姿は、被災した大人たちを勇気づけた。

 8月上旬、僕はさだまさしさんと総社市を訪ねたが、その時、「黙々と泥をかき出してくれる高校生を見て、負けちゃいられないと思った」と語ってくれる人が多かった。4日間なんと延べ約1700人の高校生が集まった。
 

すぐに具体的に


 人が困っている時に、自分も何かして助けになりたいと思うのは人情だろう。しかし、誰もが実際に行動できるとは限らない。

 総社市の高校生たちの素晴らしいところは、すぐに具体的な行動ができたことである。そして、総社市もそんな高校生の思いをきちんと受け止めることができた。

 災害は大きかったが、総社市では災害に負けない心を育てることができたのではないか。

 西日本豪雨では、農林水産業への被害も大きく、被害額は2000億円以上と推定されている。

 田んぼが浸水し、今年の収穫が見込めなくなった農家や、土砂崩れで果樹園が流されたり、スプリンクラーなどの設備が被害を受けたところもある。中には、農業の継続を諦めてしまう人もいるだろう。

 政府も激甚災害に指定し、災害復旧を支援していくというが、それだけでは十分ではない。災害の多い日本で農業を続けていくには、多くの人が関わりたくなる魅力ある農業をつくっていくことが大切だと思う。

<プロフィル> かまた・みのる

 1948年東京生まれ。長野県・諏訪中央病院名誉院長。内科医として地域医療に尽力。東北の被災者支援、チェルノブイリやイラク難民キャンプへの医療支援にも取り組む。著書は『イスラム国よ』他、多数。

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