[達人列伝 65] テッポウユリ 高知市・岡崎賢司さん(52) 在来種伝統絶やさず 絶妙の温湯処理 技術光る

生育途中の「ひのもと」を見守る岡崎さん(高知市で)

 オランダやニュージーランドなどの輸入球根が寡占するユリ業界。高知市春野町に、日本古来のテッポウユリ品種「ひのもと」にこだわり続ける匠(たくみ)がいる。土佐市花卉(かき)農業協同組合で組合長の岡崎賢司さん(52)は、半世紀以上続く組合の伝統を絶やさず、同品種を作り続ける。生産量は組合の年間出荷量の半分を占める。「死ぬまでひのもとを作り続ける」とほれ込む。

 「他人が作らないものはかっこいい。自分しか求められない」。岡崎さんは「ひのもと」を作り続ける理由をこう話す。

 「ひのもと」は鹿児島県の沖永良部島で球根が作られている在来品種。ユリは輸入球根が過半を占め、色の鮮やかさや輪の大きさを求める実需者が多い。「ひのもと」はトレンドの移り変わりとともに、徐々に球根や、切り花の生産量が減ってきた。同組合も最も多い時期は約20人が「ひのもと」を作っていたが、現在は岡崎さんを含めて3人に減った。

 一方で根強い人気もある。「ひのもと」の生産がほぼ終わった今年の6月に大阪の花き卸売会社から「咲いたテッポウユリをあるだけ送ってほしい」と電話があった。圃場(ほじょう)には普段なら捨ててしまうものをあるだけ集めて出荷した。「農家のプライドは許さなかったが、市場担当者との付き合いもある。全国的に量がなく、最後のとりでになっている」と自負する。

 品質の鍵を握るのは、定植前の球根を煮て、開花時期を調整する温湯処理だ。6月下旬に入荷した球根を大きさごとに分けて、年ごとの球根の品質を見極めながら、処理する。その後、予冷庫で保管し、8月に定植を迎える。温湯処理の時間や温度で、開花時期が決まるため、「生育状況を決める最も重要な処理の一つ」と説明する。組合が半世紀で培ってきた技術を引き継ぎ、気温などを見極めた上で、岡崎さんらが栽培する気候に適応させていく。「毎年ゼロからスタートと農家は言うが、積み重ねがあってこその言葉だ」と強調する。

 葬儀需要に加えて、婚礼需要も増えてきた。広島県の卸売会社からは婚礼関係の注文が毎年ある他、横浜市の結婚式で使われた実績もある。「古い花というイメージが徐々に薄くなり、清楚(せいそ)な見た目がさまざまなシーンに受け入れられるようになっている」と新たな需要の増加に期待を込める。(丸草慶人)
 

経営メモ


 ハウス50アールでテッポウユリを栽培。年間出荷量は「ひのもと」が約30万本、オランダ産球根が約4万本。
 

私のこだわり


 「多くの人に喜ばれる花を作るために、受け継がれてきた栽培方法で品質の高さを維持する。他の花と合わせた時、輸入球根にはない存在感を示す」 

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