農業共済見直し “無保険”農家を出すな

 自然災害や病虫害による減収を補填(ほてん)する農業共済制度が2019年産から変わる。米と麦の義務加入がなくなり、農業者の自主的な判断による任意加入になる。突発的な災害が増えている中で、“無保険者”を出さないことが重要だ。

 農業共済制度は、1947年の農業災害補償法に基づいて始まり、米麦の農作物共済の他、家畜、果樹、畑作物、園芸施設の各共済がある。農業者は支払い基準、圃場(ほじょう)や農業者ごとの補償単位、損害評価方法の異なるいくつかのメニューから選択する。主食である米と麦は、当然加入として一定規模以上の耕作をする農家に義務付けてきた。このため全国で9割を超える高い加入率を維持してきた。

 19年産からは、新しい農業保険法に基づいて当然加入がなくなり、農家の任意加入となる。「全量管理の食糧管理法が廃止されたことなど環境が変わったことに加え、任意加入を前提とする他の制度との整合性を取るため」(農水省)だ。

 問題は、任意加入への切り替えを契機に共済制度に入らない“無保険者”が出る恐れがあることだ。特に支払い対象とならない産地や小規模な農家の中には、当然加入への不満があった。

 また、米農家の多くが選択してきた圃場ごとの「一筆方式」や、共済金の支払額が少ない場合に掛け金を払い戻す「無事戻し」などが21年産でなくなる。新しく行う加入承諾手続き時に、農業共済に入らない農業者が出る恐れがある。

 担い手不足が深刻な状況の中で“無保険者”が発生することを見過ごすわけにはいかない。近年は突発的な集中豪雨など異常気象が多発し、被災が離農につながる。これまで災害の少なかった地域でも、いつ何時災害に見舞われるか分からない。自然災害への備えを欠くことのないよう、農業者の意識を高める必要がある。加入漏れがないよう申請期間を余裕を持って設けるなどの対応が必要だ。

 19年からは、価格下落などで経営全体の売上額が減ったときに補填する新しい収入保険制度が始まる。加入申請は10月1日から始まったが、認知度が低い。共済制度対象外の野菜農家などへの周知を急ぐべきだ。対象は青色申告者に限られる。青色申告も増やす必要がある。

 収入保険は、農業共済制度や収入減少影響緩和対策(ナラシ)など類似の経営安定対策と併用することはできない。農業者にとっては、どれを選べば一番有利なのかが最大の関心事だろう。個々の農業者が選択しやすいように具体的な試算を含めた丁寧な説明が必要だ。認定農業者など比較的規模の大きな農業者だけでなく、全ての農業者を対象に丁寧に説明することが肝心だ。

 保険はセーフティーネットである。無防備な農業者を出さないことは、食料の安定供給を担う政府の重要な責務である。 

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