買い取り販売1割増 農中総研が16年度分析 JA自己改革が成果
2018年10月15日
分析では事業別の利用高や損益などとともに、自己改革でJAグループが最重点分野とした項目も対象とした。16年度は「創造的自己改革への挑戦」が本格的にスタートした年として着目した。
「マーケットインに基づく生産・販売事業方式への転換」では、買い取り販売をはじめとした多様な方法による販売拡大を掲げている。16年度の農産物の買い取り販売高は前年度から9・7%増の1691億円。米を中心に大きく増えた。研究をまとめた尾高恵美主任研究員は「実需者との事前契約も進んでいるのではないか」とみる。
「営農・経済事業への経営資源のシフト」では事業管理費を分析した。事業管理費に占める農業関連事業・営農指導事業の割合は26・8%と前年度比0・3ポイント拡大。10~15年度は0・1ポイント以内の変化だった。正職員に占める営農・経済部門の割合が増えたことや、共同利用施設として直売所や青果物貯蔵施設が増加したことが影響したとみる。全体の正職員数が減る中、販売事業の正職員は0・7%増と2年度連続で増えた。
一方で、経営全体や損益動向分析では課題も提起。信用事業利益はマイナス金利などで前年度比で減少している。今後も低金利が続けば、農業関連事業や営農指導事業での損失を減らす必要があると指摘。このため、リスク回避への体制整備をした上で、受託販売に比べて利益率が高い買い取り販売の拡大などが考えられるとした。
「マーケットインに基づく生産・販売事業方式への転換」では、買い取り販売をはじめとした多様な方法による販売拡大を掲げている。16年度の農産物の買い取り販売高は前年度から9・7%増の1691億円。米を中心に大きく増えた。研究をまとめた尾高恵美主任研究員は「実需者との事前契約も進んでいるのではないか」とみる。
「営農・経済事業への経営資源のシフト」では事業管理費を分析した。事業管理費に占める農業関連事業・営農指導事業の割合は26・8%と前年度比0・3ポイント拡大。10~15年度は0・1ポイント以内の変化だった。正職員に占める営農・経済部門の割合が増えたことや、共同利用施設として直売所や青果物貯蔵施設が増加したことが影響したとみる。全体の正職員数が減る中、販売事業の正職員は0・7%増と2年度連続で増えた。
一方で、経営全体や損益動向分析では課題も提起。信用事業利益はマイナス金利などで前年度比で減少している。今後も低金利が続けば、農業関連事業や営農指導事業での損失を減らす必要があると指摘。このため、リスク回避への体制整備をした上で、受託販売に比べて利益率が高い買い取り販売の拡大などが考えられるとした。
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日本農業のグローバル化 知恵結集し輸出促せ 木之内農園会長 木之内均
日本社会は今、あらゆる分野のグローバル化について騒がれている。しかし、農業分野ではどうだろうか。
農水省の輸出促進対策などもあり、多くの日本の農産物や加工品が海を渡り、世界各地で日本食ブームを巻き起こしている。輸出対策が始まる前に、私は日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査員として、東南アジア各国を回ったことがあるが、その頃は、日本の農産物を海外で販売することなど、考えもしなかった。
だが、実際に海外諸国へ行ってみると、鳥取県の梨や青森県のリンゴが既に輸出を成功させており、高い評価を受けていた。
当時は牛海綿状脳症(BSE)のため輸出できなかったが、和牛の肉は各国から要望があり、オーストラリア産「WAGYU」が知名度を伸ばしていた。
高評価に可能性
私はこの現象に驚いたと同時に、日本農業の可能性の大きさに、夢を感じずにはいられなかった。ところが日本の農業界では、まだ海外に目を向ける人はほとんどいない状況だった。
農業は大地に足をつけ、日々こつこつと動植物の世話をすることから始まる。日本の農村は、まさしく江戸時代の鎖国状態のようだった。
あれから十数年、農水省の輸出促進策の効果もあり、今では日本の農産物が世界に通用することを、多くの人々が認識する時代となった。
だが、このことが日本の農業者や産地を本当に潤しているのだろうか。私にはそう見えない。
私が会長を務める木之内農園を含めて、いくつかの農業法人や若手農家の中には海外進出を模索している人がいることは確かである。しかし、それは点にとどまる。
日本農業のように島国で閉ざされた所で育った個人や小さな法人経営体では、現実として海外進出のリスクや投資に耐えられるだけの体力を持つ経営体は、ごく一部にすぎない。
資金もさることながら、言葉や人種、宗教や文化の違いを乗り越えて、海外で本格的に農業ビジネスを展開できる経営体は無いと言っても過言ではない。
技術は世界水準
私は若い頃にブラジルで1年以上過ごし、その後も多くの国で農業に関わる仕事をしてきた。つい先日も米国のフロリダで開かれた米国イチゴ学会に参加した。
世界の農業者や研究者、農業関連企業の方と話をすると、全員が世界の市場を見据えた上で、自分の事業の進め方を考えている。日本のように、国内市場を中心に考えている農業とは全く異なっている。
日本農業は、島国で狭い耕地や四季の変化を持続的に利用し、高温多雨なモンスーン気候の中で繊細な営農技術を培ってきた。さらに、世界で最も高品質で安定的な生産ができる技術も編み出してきた。
生産現場が育んできたこの技術と、至れり尽くせりの機械や資材メーカーの技術、そして流通やマーケティング。全ての業界が協力して日本の農業と農畜産物のプラットホームを整え、世界に向けて貢献することこそが、日本農業の本当のグローバル化であり、求められる道筋ではないかと感じてならない。
きのうち・ひとし 1961年神奈川県生まれ。九州東海大学農学部卒業後、熊本県阿蘇で新規参入。(有)木之内農園、(株)花の海の経営の傍ら、東海大学教授、熊本県教育委員を務め若手育成に力を入れる。著書に『大地への夢』。
2019年02月18日

岩手産ポークの前沢牛入りフランク JA岩手ふるさと
岩手県のJA岩手ふるさとが販売するフランクフルトソーセージ。味に定評のある県産ポークに、地元ブランドの前沢牛を練り込んだ。
県産豚肉の歯応えある食感に加え、前沢牛のうま味が重なり、かむほどに味わい深い本格派のソーセージに仕上がっている。スパイシーなペッパー味と、子どもでも食べやすいプレーン味の2種類がある。
1袋(冷凍)3本入り(1本90グラム)で1260円。JAの「産直来夢くん」や「産直センター菜旬館」、インターネットショップ「奥州うまいもん屋」などで販売している。問い合わせはJA流通販売課、(電)0197(41)5215。
2019年02月15日
TPP11、日欧EPAで米国 対日輸出 乳製品 半減を予測 貿易交渉 加速を訴え 酪農輸出団体が分析
米国抜きの環太平洋連携協定(TPP11)と日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)によって、2027年までに米国乳製品の対日輸出が半減し、最終的に累計54億ドル(約5900億円)の損失が出るとする報告書を米国の酪農団体が公表した。日米貿易協定交渉で他の協定と「同程度」の成果が必要としており、日本市場の開放を目指し焦りを募らせる米国側の姿勢が改めて浮き彫りとなった。
米国酪農輸出評議会(USDEC)が日欧EPAの発効に合わせ、チーズ、ホエー(乳清)、乳糖、脱脂粉乳の対日輸出の影響について、民間企業に調査を委託した。
日本は日欧EPAで、EUの輸出意欲が強いソフト系チーズで最大3万1000トン(生乳換算約39万トン)の輸入枠を設定。枠内関税を16年目に撤廃する。チェダー、ゴーダなどのハード系はTPP、日欧EPAとも16年目に関税を撤廃する。
こうした内容に基づき、米国乳製品の対日輸出は、22年までの5年間で従来の予測よりも9000万ドル(約99億円)、19%落ちると分析した。
27年までに両協定の参加国に対日輸出の半分を奪われ、累計損失額は13億ドル(約1400億円)と試算。日本の関税削減・撤廃が完了する38年までに同54億ドル(約5900億円)の損失を見込んだ。
最も大きい影響を見込むのがチーズ。人口減の中でも日本の消費量を増えるとみており、魅力的な市場と位置付ける。両協定と同じ条件なら、10年間で対日輸出量を大幅に増やせると推計する。
ただ、米国はTPPから離脱したため、関税の格差などで競争力低下が進み、10年後には対日輸出が8割減るとした。
「日本との間に(TPPや日欧EPAと)同等の協定がないままだと、米国は危険なまでに市場シェアを失う」と危機感を示した。一連の分析を踏まえて、「早期に手を打たないと市場での居場所を失う」と、日米交渉加速の必要性を指摘した。
2019年02月18日

施設野菜、酪農 営農指導にICT活用 北海道・JA新はこだて
北海道のJA新はこだてはNTT東日本などと協力して農業情報通信技術(ICT)の実証試験を始めた。施設野菜、酪農の生産環境データの測定・分析に加え、農作業も記録し、生産性向上に結び付ける。JAと農業改良普及センターが情報を共有しながら、データに基づいた営農指導を実践。農産物の安定生産と品質向上につなげる。
2019年02月15日

やきそば 北海道・JA清里町
北海道のJA清里町が同町産小麦「きたほなみ」100%で作った焼きそば。「バーベキュー味」と「ガーリックバター味」の2種類を用意する。JAのフードアクションチームが、子どもとのキャンプで提供し好評だったことや、祭りなどで多くの人に好まれた味を選んだ。麺は色鮮やかで、もちもち感が特徴だ。
1袋(2人前、300グラム)の価格はいずれも330円。JAはこれまでにも、地場産小麦の消費拡大と地産地消に取り組んでおり、ラーメンやうどんなど6種類の加工品を商品化している。
同町のエーコープきよさと店や北広島市のホクレンくるるの杜(もり)などで販売する。問い合わせはJA企画審査課、(電)0152(25)2211。
2019年02月19日
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地鶏 遺伝子型選び増体 「天草大王」平均6・7% 農研機構など
農研機構と秋田、岐阜、熊本、宮崎の4県の畜産研究機関は18日、地鶏生産の元となる種鶏を遺伝子型で選抜することで、地鶏の発育性を高め、出荷時体重を増やすことに成功したと発表した。出荷時の平均体重は40~222グラム増えた。特定の遺伝子型を系統選抜の目印にすれば、発育性向上に役立つ。増体により、4県の地鶏合計で生産者の売り上げが、年間約6600万円増えると試算する。
2019年02月19日

「泊」は旅館、「食」は農家 おにぎり 里山料理 宿までお届け 宮城・鳴子温泉郷
宮城県大崎市の鳴子温泉郷で、農家グループが旅館に食事を届けるケータリング事業が活発化している。自ら調理して提供することで、収益の確保につなげる。旅行客の長期宿泊を狙う旅館からの需要や、温泉街で開かれる会議などの食事として需要がある他、今後は宿泊サービスと食事を分ける“泊食分離”で、訪日外国人(インバウンド)などからの需要も見込んでいる。(塩崎恵)
地元米 ファン獲得 NPO運営店
午後4時半、鳴子温泉郷の温泉旅館「宿みやま」に、木のおけに入ったおにぎり20個が届いた。同旅館が宿泊客の夕食用に注文したもので、鳴子温泉地域の農家らでつくるNPO法人鳴子の米プロジェクトが運営するおにぎり店「むすびや」が配達した。
同旅館では月に1、2回、同店におにぎりを注文する。館主の板垣幸寿さん(63)は「食事に変化を付けて、長期滞在につなげたい」と話す。
「むすびや」は、米「ゆきむすび」のおにぎりや弁当を販売する。価格は塩むすびなら1個80円から。大きさや具材は、希望に応じて対応する。旅館からの注文は、週1回程度。旅館で開かれる会議の昼食や、旅館の夕食に利用されており、宿泊客50人用の夜食の注文もあった。現在は旅館7軒が利用する。
法人の上野健夫理事長は「『ゆきむすび』を食べてもらい、ファンを獲得するチャンス」と話す。
目の前で調理 新サービスも
鳴子温泉郷では、農家が作るオードブル「農ドブル」も2019年度から本格スタートする。泊まりに来た客に里山料理を振る舞うケータリングサービスで、県産農産物を使った料理を農家が客の目の前でも作り、提供し、交流する。県内の米やトマト、養鶏農家など15人が参加する。
同サービスは農家の所得向上を模索する中、加工品などは全国の類似商品と価格競争になると感じ、地元での販路を考えていたところ、客が集まる温泉街に目を付けた。宿泊客に農産物を食べてもらい、最終的に購入してもらうことが目的だ。
18年度は、旅館1軒で試験的に行った。季節の野菜を使った煮物やサラダ、漬物など6、7種類を農家が調理し、出来たてを提供。料金は1人5000円からで、20人から予約を受け付けた。旅館では団体研修などが開かれることが多く、月2、3回の利用があり、手応えを感じている。今後は、インバウンド需要を見込む。
企画した同市の「ブルーファーム」の早坂正年代表は、海外では宿泊と食事をする場所が別であることが一般的とし、「日本だけでなく世界をターゲットにすれば、70億人の市場になる。農家が自ら調理して提供することで利幅を増やす」と意気込む。18年度の試験結果を基に、値段やサービス内容を検討していく。
2019年02月19日
TPP発効受け2月上旬分 牛肉輸入6666トン
財務省は18日、環太平洋連携協定(TPP)参加国からの2月上旬(1~10日)の牛肉輸入量を発表した。オーストラリアやカナダなどから6666トン。発効した昨年12月30日から同時期までの累計輸入量は3万9551トンとなった。
TPP参加国のうち輸入実績のあるオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、メキシコの4カ国からと考えられる。1月は前年を大きく上回るスピードで輸入されたが、2月は少し落ち着いた。
今月1日に発効したEUとの経済連携協定(EPA)ではTPP同様に、牛肉関税が38・5%から27・5%に下がった。2月上旬のEU産輸入量は48トンだった。極端に少なかった2018年2月(7トン)の7倍、17年2月(78トン)の62%を占めた。18年は568トンで、ポーランド、アイルランド、フランスなど7カ国から輸入した。
2019年02月19日

18年産輸入量105万トン 安価に手当て、簡便性… 冷凍野菜が過去最多
2018年の冷凍野菜の輸入量が105万トンと過去最高を更新した。100万トン超えは2年連続。猛暑や台風などの影響から国産生鮮野菜の市場価格が不安定となる中、安価の輸入物で手当てする動きが強まった。調理の簡便性を求める消費者ニーズから市場が拡大している背景もある。国内の野菜産地は、輸入冷凍野菜の増加に危機感を募らせる。国産を求める声は多く、冷凍野菜市場の拡大に合わせた業務向け野菜の拡大など、国内産地の基盤強化策が重要になっている。
国産の不安定を反映
財務省の貿易統計によると、18年の冷凍野菜(調製品を含む)の輸入量は、前年比4%増の105万2076トン。品目別で増加が目立つのは葉茎菜類だ。ブロッコリーは18%増の5万7330トン、ホウレンソウも14%増の5万1796トンだった。全体の4割近くを占めるジャガイモは1%増の38万1634トン。主力の北海道産の生産量が回復した後も、輸入量は高水準が続いている。
国・地域別に見ると、中国からの伸びが目立ち、7%増の46万3251トンと3年連続で過去最高を更新。米国産は3%減の31万7506トン。市場関係者は、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の発効を受け、「今後は欧州産フライドポテトの輸入が増える可能性がある」と話す。
日本冷凍食品協会は、冷凍野菜が増える要因を「年間を通じて安定価格で販売している点が評価されている」と分析。コンビニやドラッグストアでも扱う店舗が増えているという。「今後も市場拡大が続く」と見通す。
首都圏でスーパーを展開するライフコーポレーション(東京都台東区)も「昨年の(冷凍野菜の)売上高は前年を4%上回った」と話す。都内の別のスーパーでも「春先は10%以上伸びた」と説明する。
一方、国産の冷凍野菜に期待する声も高まっている。ライフは国産にこだわった冷凍野菜を販売している。安心感などから「売り上げは2割近くは伸びている」と手応えを語る。JA宮崎経済連の関連会社で、冷凍ホウレンソウなどを製造販売するジェイエイフーズみやざきの担当者は「天候不順などもあり、増える注文に応えられない状況」と原料野菜の調達に苦心しており、「チャンスを逃さないためにも生産体制の確立が急務」と課題を指摘する。
2019年02月18日
TPP11、日欧EPAで米国 対日輸出 乳製品 半減を予測 貿易交渉 加速を訴え 酪農輸出団体が分析
米国抜きの環太平洋連携協定(TPP11)と日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)によって、2027年までに米国乳製品の対日輸出が半減し、最終的に累計54億ドル(約5900億円)の損失が出るとする報告書を米国の酪農団体が公表した。日米貿易協定交渉で他の協定と「同程度」の成果が必要としており、日本市場の開放を目指し焦りを募らせる米国側の姿勢が改めて浮き彫りとなった。
米国酪農輸出評議会(USDEC)が日欧EPAの発効に合わせ、チーズ、ホエー(乳清)、乳糖、脱脂粉乳の対日輸出の影響について、民間企業に調査を委託した。
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最も大きい影響を見込むのがチーズ。人口減の中でも日本の消費量を増えるとみており、魅力的な市場と位置付ける。両協定と同じ条件なら、10年間で対日輸出量を大幅に増やせると推計する。
ただ、米国はTPPから離脱したため、関税の格差などで競争力低下が進み、10年後には対日輸出が8割減るとした。
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2019年02月18日

米の農産物検査の見直し 「制度継続」望む声 産地 手法効率化 流通 規格強化を 農水省調査
米の農産物検査の見直しを巡り、農水省は、産地や流通、実需など各段階の関係者に行った調査結果を公表した。同制度への要望を尋ねたところ、現状維持を求める意見が多く、同制度の廃止を求める回答はほとんどなかった。一方、検査員の確保に課題がある実態を踏まえ、産地からは検査の効率化を求める声も上がった。ただ、流通関係者は検査規格の強化を求める傾向となった。
同調査では、「生産者」「集荷事業者」「登録検査機関」「米卸」「米穀店」「炊飯事業者」の6段階の関係者に加え、「都道府県」に対し、同制度への要望を選択肢で尋ねた。
炊飯事業者は同制度について、「現状のままでいい」が43%で最多となった。炊飯事業者以外でも、全ての関係者で現状維持の回答が上位となった。一方、「(同制度の)全面的な廃止」を求める回答はどの関係者でも0~3%にとどまった。ほぼ全ての関係者が基本的に同制度の維持を求めている実態が明らかとなった。
ただ、産地からは検査の効率化を求める回答が相次いだ。「検査手法の合理化・簡素化」を回答した割合は、生産者で41%、集荷事業者で49%、都道府県で36%となり、それぞれ最多の回答となった。また、検査を行う登録検査機関では、「事務の簡素化」(49%)を求める回答が最多となった。
産地で検査員確保に課題がある実態を踏まえ、東北地方のJA関係者は「(等級などを判断する穀粒鑑定では)従来の検査員による目視鑑定に加え、機器による計測なども取り入れ、作業を効率化する必要がある」と指摘する。
一方、流通関係者からは「検査規格の強化」を求める回答が多かった。米卸で34%、米穀店で43%となり、それぞれ最多の回答だった。等級の判断に関わる基準の厳格化などを求める声がある。
同制度を巡っては、農業競争力強化支援法で今年8月までの見直し着手を明記。同省は1月下旬に産地や実需の関係者などを交えた意見交換会を開き、今回の結果を公表した。調査自体は2015年度に実施していた。
2019年02月17日
液体ミルク 災害用へ備蓄続々 国内製造・販売も加速
国内での製造・販売が解禁された乳児用液体ミルクを災害用に備蓄する動きが自治体で出ている。災害時に乳幼児を守るためとし、東京都文京区や群馬県渋川市、大阪府箕面市が2019年度予算案に盛り込んだ。国内メーカーも製造・販売の準備や商品化の検討に入っており、今後各地の自治体で備蓄の動きが活発化しそうだ。
乳児用液体ミルクは粉ミルクのように湯で溶かす必要がなく、災害時にも、すぐに乳児に飲ませられる。11年の東日本大震災、16年の熊本地震の際に海外からの救援物資として持ち込まれ、関心を集めた。日本では昨年8月に厚生労働省が製造・販売を解禁した。
東京都文京区は昨年11月に区内の私立大学4校や製造メーカー、出版社と共同事業体(コンソーシアム)を形成。4校を妊産婦、乳児向けの救護所に指定し、災害時に乳児160人が1日半利用できるよう、125ミリリットル入り液体ミルクパック2000個と使い捨ての哺乳瓶を備える。新年度予算案に備蓄関連費用で260万円を計上した。
群馬県渋川市も2月下旬開会予定の市議会に提案する新年度予算案に備蓄費用として約56万円を計上する方針を固めた。紙パック(125ミリリットル)入りの液体ミルクを3日分として420本、保健センターに備蓄する。
大阪府箕面市も19日開会の市議会に国産の乳児用液体ミルクを備蓄する費用12万7000円を盛り込んだ予算案を提出する。常時600個(1個125ミリリットル)を公立保育園に備蓄する。
乳児用液体ミルクの製造・販売の動きも加速する。江崎グリコや明治が製造に向け準備を進める他、森永乳業や雪印メグミルクが商品化を検討する。渋川市の担当者は「製造メーカーが増えることで価格や質の向上が期待され、液体ミルクの備蓄を検討する自治体は今後増えるのではないか」とみる。
2019年02月17日

世界のラン展開幕 多彩な「花々」 「光る」初公開
世界最大級のランの祭典「世界らん展2019―花と緑の祭典」が15日、東京都文京区の東京ドームで始まった。29回目の今年は、ランにとどまらず、多彩な「花々」や多肉・食虫植物などの「緑」があふれる。世界初公開の「光るシクラメン」などが見どころ。22日まで。
会場には世界18カ国・地域の約3000種、約10万株、250万輪以上の花を展示する。コチョウランやカトレアなどのランで彩った幅約20メートル、高さ約5メートルの「オーキッドゲート」や、華やかなシンボルモニュメントなど、写真映えする空間を演出。光るシクラメンは、深海に生息する海洋プランクトンから発見された蛍光タンパク質の遺伝子情報を導入した。
ランのコンテストは個別部門の最高位「日本大賞」に、東京都の櫻井一さん(71)が栽培したパフィオペディラム エメラルドゲート「グリーン グローブ」が選ばれた。
2019年02月16日

100年ぶりに地酒復活 若手が原料米作り協力 栃木県高根沢町
栃木県有数の米どころ、高根沢町で、町内産米を使った日本酒が100年ぶりに復活した。若手農家や隣接する那須烏山市の酒造会社などが協力。「縁も高根沢」と名付け、町内の食と健康をテーマとした複合施設、元気あっぷむらで販売を始めた。
酒造りは、加藤公博町長が発案し、昨年3月に本格始動した。同公社によると、同町では明治時代以降酒蔵がなくなり、日本酒の醸造が途絶えていたという。4Hクラブの若手農家3人が酒造好適米「山田錦」を計80アール作付け。収穫した米約3トンを、昨年11月末から島崎酒造が醸造した。
9日には完成発表会があった。同公社の神長政男代表は「カメムシ発生や台風、大雨など苦労があったが、多くの方の協力で完成した。若手農家の思いが詰まったお酒をぜひ飲んでほしい」と呼び掛けた。4Hクラブの代表・永井秀和さん(37)は「飲みやすく、すっきりとしておいしい」と笑顔を見せた。
2、3月に生酒2000本、4月以降に1回火入れ4000本を販売する予定。1瓶(720ミリリットル)1700円。問い合わせは元気あっぷむら、(電)028(676)1126。
2019年02月15日

第2回落札7・9万トン 「優先枠」累計は47% 備蓄米
農水省は13日、2019年産政府備蓄米の第2回入札(12日実施)の結果を公表した。今回新たに7万9775トンが落札され、初回を加えた「優先枠」の累計落札数量は9万7403トンとなった。累計落札率は年間枠(20万9140トン)の47%だった。初回で様子見した新潟や富山といった主産地で落札が伸びるなど、取り組み拡大に向けた動きが出ている。
2019年02月14日